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「はい、全員揃ったね! 今日は親睦を深めるためのダブルデートだよ!」
太宰が爽やかに宣言したのは、ヨコハマを一望できる超高級中華料理店の円卓だった。 メンツは最悪である。ニコニコとメニューを眺める太宰、今すぐ帰りたいオーラ全開の中也、ガチガチに緊張して箸を落とす敦、そして無言で殺気を放つ芥川。
「太宰……手前、何の真似だ。なんで俺がこのクソガキ共と飯を食わなきゃならねェ」 「いいじゃないか中也、私と君。敦くんと芥川くん。ほら、完璧な組み合わせ(ペア)だろう?」
太宰の言葉に、敦と芥川が同時にビクッと肩を揺らす。
「あの、太宰さん……『デート』って、普通もっとこう……穏やかなものじゃ……」 「黙れ人虎。貴様と並んでいるだけで胃が焼ける」 「僕だって好きで隣に座ってるわけじゃないよ!」
「ははは! 仲が良いねぇ」と笑う太宰が、円卓のターンテーブルを勢いよく回した。 運ばれてきたのは、激辛で有名な麻婆豆腐だ。
「さあ、これは『愛の試練』だ。ペアで協力して完食したチームには、私がとっておきのプレゼントをあげよう」
「いらねェよ!!」と中也が即座に突っ込むが、隣の芥川は「太宰さんからの……プレゼント……」と呟き、瞳に異常なまでの執念を宿した。
「人虎。食え」 「えっ、あ、ちょ、芥川!? 自分で行かないの!?」 「僕は辛いものは好まぬ。貴様が僕の分まで食せ。それが僕ら(ペア)の勝利への近道だ」 「それデートでも協力でもない、ただの押し付けだよ!」
一方、旧双黒のテーブルはさらに混沌としていた。 「ほら中也、あーん。この唐辛子、君に似て真っ赤だよ」 「殺すぞ手前! 自分で食いやがれ!」
高級店の静寂を切り裂く、怒号と悲鳴。 隣の席の客が怯えて次々と退店していく中、太宰だけが満足げにワインを回している。
「……ねえ、中也さん。僕ら、なんでこんなことしてるんでしょうね……」 白目を剥きながら激辛豆腐を口に運ぶ敦に、中也が同情の混じった視線を向けた。
「……気にするな。こいつに関わったのが運の尽きだ。ほら、そっちの黒いのに酒でも飲ませて黙らせろ」
結局、会計はすべて中也のカードに。 店を出る頃には、敦は辛さで、芥川は極度の緊張で、中也は怒りでフラフラになっていたが、太宰だけは「次は遊園地かな!」と上機嫌にスキップをしていた。
ヨコハマの夜は、今日も今日とて騒がしい。