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ここで立ち止まっていては、復讐の果実を手にすることはできない。
「……まぁ、確かめてみましょうか」
私が決意を口にすると同時に、ダイキリが既に店の奥から接続ケーブルと古いテレビモニターを引っ張り出してきていた。
相変わらず、こういう時の彼女は仕事が早い。
「任せてください! 音量調整も完璧にしておきます!」
彼女は鼻歌まじりに手際よく配線を整える。
そのあまりの能天気さが、今は少しだけ──
氷のように冷え切った私の心には、ありがたかった。
カチ、とリールが重々しく回る音。
それに混じり、冷たい地下室の残響がスピーカーから漏れ出した。
流れてきたのは、整えられた「人の声」などではなかった。
それは、もっと生々しく、湿り気を帯びた──
「現場」の音そのもの。
『……おい。まだ「個」が残っているな。そんな濁った目で私を見るなと言ったはずだ』
低く、傲慢な男の声。
アルベルトの実施者であり、養父と呼ばれたあの男だ。
直後、スピーカーが割れんばかりの鈍い打撃音と、重い鎖が床を擦れる高い金属音が店内に響き渡る。
『……っ、あ……が……』
漏れ聞こえてきたのは、幼い子供の、掠れた悲鳴。
今のアルベルトの抑揚のない声とは違う
痛みと恐怖に喘ぎ、震える、紛れもない「人間」の子供の声だった。
ダイキリが息を呑むのが分かった。
隣に立つアルベルトの指先が、わずかに、本当にわずかにピクリと跳ねるのを私は見逃さなかった。
『教育が足りないな。お前は人間ではない。「アルベルト」という名の、スペアに過ぎないのだからな。お前の心など、この地下室のゴミと一緒に捨ててしまえ』
『……いや……だ……ぼく、は……』
『「ぼく」? ほう、まだそんな言葉を使える余裕があるのか。よろしい。では、その自意識が摩耗し、空っぽになるまでやり直そう』
『……おい、次の薬を持ってこい。脳を直接、伯爵の望む色に塗り替えてやる』
再び、凄惨な絶叫が店内の空気を切り裂いた。
『や、だ、あが、はな、して……っ!!』
それは声帯が千切れるような、魂を削り取るような叫びだった。
『あ゛……あ゛ぁっ!!ああ、あああぁぁぁぁぁぁっ……!!』
薬を強制的に投与されているのか、あるいは麻酔なしの外科的な処置を施されているのか。
ひゅー、ひゅー、と空気の漏れるような、喉が鳴る音がスピーカーを物理的に揺らす。
子供の細い指先が、逃げ場のないコンクリートを必死に掻き毟るような爪の音。