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そして、次第に言語を失い
ただの「肉塊の悲鳴」へと変わっていくその残酷な変遷が、録音機には克明に、非道なまでに刻まれていた。
『あ……う、ああぁ……っ。あ、が……………』
テープ越しに、当時その場に充満していたであろう冷気と、鉄の臭いまでが漂ってくる気がした。
養父の満足げな笑い声が、途切れた悲鳴に重なる。
最後には、言葉にならない泡を吹くような音だけが残り、やがてそれさえも聞こえなくなった。
静寂。
ただ、養父が冷酷に器具を片付けるカチャカチャという乾いた金属音だけが、永遠のように長く続いていた。
『素晴らしい。これでまた一つ、「器」が完成に近づいた。』
カチン、と再生が止まる乾いた音が鳴ったとき
この部屋には凍りついたような沈黙しか残っていなかった。
「……」
誰も、何も言えない。
私だって、ダイキリだって。
そして何より、当の本人であるはずのアルベルトでさえも。
店内にはまだ、録音されていたあの子供の断末魔の余韻が、粒子となって漂っているようだった。
恐る恐るアルベルトを横目で見ると、彼はいつも通りの冷静な無表情を崩さず
ただ静かに、停止したテープレコーダーを見下ろしていた。
しかし、照明の加減だろうか。
彼の足元に伸びる影が、心なしか微かに揺れているのに気づいた。
それは根源的な恐怖なのか、あるいは遅すぎた怒りなのか。
それとも、封じられた記憶が肉体に引き起こした生理的な反応なのか──
私には、判別がつかなかった。
「……ねぇ、アルベルトさん」
ダイキリが、消え入りそうな声で、おそるおそる口を開いた。
「大丈夫、ですか?」
「ええ……問題ありません」
返ってきた答えは、期待を裏切るほどにいつもと同じ、平坦で抑揚のないもの。
「また少し…思い出してきたかもしれませんね……」
そう言いながら、彼はもう一度
目の前にある青いテープを、まるで異質な異物でも見るかのように無感情に見つめた。
私は重苦しい空気の中でゆっくりと立ち上がり、暖炉の傍に積んであった古い毛布を一枚手に取った。
「アルベルト」
呼びかけると、彼は機械的な正確さでこちらに目を向けた。
光を反射しないガラス玉のような瞳。
だが今、その奥底には、微かに水気を含んだような
歪んだ像が結ばれている気がしてならなかった。
「座りなさい。少し休みましょう」
「問題ありません。体はなんとも」
「体じゃなくて、心よ。混乱してるでしょ」