テラーノベル
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駅前のカフェ。テラス席でパンケーキを囲んでいた五つ子たちの前に、その「彼女」は現れた。「……お待たせしました、なのかな?」
潤羽るしあの特徴的な、鈴を転がすような、それでいてどこか儚い声。雄大が喉を絞り、完璧に発声したその一言に、テーブルの空気は一瞬で凍りついた。
一番に反応したのは二乃だった。彼女はフォークを皿に置くと、食い入るように雄大の衣装のディテールを見つめる。
「ちょっと……近くで見ても隙がないじゃない。そのレースのあしらい、既製品じゃないわね? 自分で直したの?」
二乃の鋭い指摘に、雄大はふっと目を細めて、るしあらしい少し生意気な笑みを浮かべる。
「ふふ、よく気づいたね。るしあに相応しくない妥協は、死を招くよ?」
その徹底したキャラ作りと美貌に、一花が思わず吹き出した。
「あはは、徹底してるね! でも、あまりに綺麗すぎて、隣に並ぶのがちょっと怖いかも。ねえ、モデルにスカウトされたりしてない?」
一花のプロの目から見ても、雄大の立ち振る舞いは黄金比そのものだった。
三玖は、雄大の足元からヘッドドレスまでをじっと観察した後、自分のマフラーに顔を埋めた。
「……負けた。女子として、完敗」
「三玖、そんなことないですよ! ……でも、確かにこの透明感はすごいです」
四葉がフォローを入れるが、彼女自身も雄大の放つ「守ってあげたくなるオーラ」に、目が離せなくなっている。
そこへ、遅れてやってきた五月が合流した。彼女は雄大の姿を見るなり、手に持っていた参考書を落とした。
「な、ななな……なんですか、その格好は! 破廉恥……ではありませんが、あまりにも完成度が高すぎて、直視できません!」
顔を真っ赤にして詰め寄る五月に、雄大はるしあの定番ポーズである「ふぁんでっど」を誘うような仕草をしてみせる。
「五月ちゃん、そんなに驚かなくてもいいじゃない。るしあは、ここにいるよ?」
その瞬間、五月は言葉を失い、二乃は「……ちょっと、心臓に悪いわね」と顔を背けた。一花は面白そうにスマホを取り出し、「記念写真、撮っちゃおうか?」と提案する。
雄大は、五つ子たちのそれぞれの反応を楽しみながら、心のどこかで確信していた。
「性別なんて、ただの記号だ」
本家を超えたクオリティの「るしあ」として、彼はこの街の、そして五つ子たちの日常を鮮やかに塗り替えてしまったのだ。
「……さて、次は誰を『るしあ』の虜にしようかな?」
夕陽に照らされたエメラルドグリーンの髪が、残酷なほど美しく輝いた。
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