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레몬인
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そあち♡໒꒱
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なんたろ
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あおいです🌷 第104話、もう読ませていただきました……! なんというか、過去の自分があまりにリアルすぎて「架空のキャラクター」扱いされるって、皮肉すぎて笑うしかないですね(笑)。でも笑い事じゃなくて、黒岩調査官のロジックが完璧すぎて、読んでるこっちまで胃がキリキリしました……。 結愛さんの「公開処刑」で証明するっていう選択肢、冷酷だけど確かにそれをやる人間は嘘をついてないって証明になるんですよね。でも社長のプライド……! 次回のコラボ配信、どうなるのか気になって夜しか眠れません😭
第104話:調査官の疑念「これは架空のキャラクターでは?」〜完璧すぎる帳簿と、悲惨すぎるリアル〜
「か、架空のキャラクター……?」
北海道、帯広市。
春の冷ややかな風が吹き込む、築三十年のボロアパートの四畳半。
俺は、畳の上に這いつくばった体勢のまま、間の抜けた声を上げた。
目の前には、帯広税務署・法人課税部門の調査官である黒岩が、銀縁メガネの奥の瞳を鋭く光らせて立っている。
彼の手には、俺の『黒歴史』――かつて某大手VTuberに送りつけた、「40歳高齢無職オタクの質感」を書き連ねた、あまりにも痛々しい悩み相談メールの下書きが握られていた。
「ええ、そうです。架空のキャラクター(ダミー)です」
黒岩は、エリート官僚特有の、一切の感情を排した冷徹なトーンで断言した。
「秋谷社長。我々税務調査官は、これまでに数多くの悪質な仮装・隠蔽行為を見てきました。その手口の一つに、『実態のない悲惨な人物像』を作り上げ、同情を引いて資金を集めたり、あるいは架空の経費を計上して利益を圧縮したりする、というものがあります」
「は、はぁ……」
「この書類に書かれている人物像を、客観的に分析してみましょう」
黒岩は、手元のペラペラの紙に視線を落とし、再び『俺の黒歴史』を検分し始めた。
やめてくれ。これ以上の追い打ちは、俺の四十歳の精神(メンタル)を完全に破壊する。
「『朝7時にうすら体調悪い状態で起きる』『格安スマホでカクカクの映像を見ながら適当に連打する』『自分の頭ではもう考えられないのでAIに頼る』『1行も本文を書いていないのに作家を目指す』……」
黒岩が淡々と読み上げるたびに、俺の心臓は削り取られるような痛みを覚えていた。
やめろ。それ以上俺の痛いところを突かないでくれ。
「……秋谷社長。率直に申し上げます。この文章に描かれている人物は、あまりにも【無能で、怠惰で、生産性が皆無】です」
「ぐふっ……!!」
国家権力からの、直球すぎる誹謗中傷。
いや、俺自身が書いた事実なのだから反論できないのが、さらに辛い。
「しかし一方で」
黒岩は、机の上に積み上げられた、結愛(ゆあ)とジェミニ先生が徹夜で仕上げた『完璧な帳簿』を指差した。
「株式会社インフィニティ・ワンの経理書類は、一円の狂いもない完璧な仕上がりです。さらに、あなたは『V−Breaking』という大会において、高度な話術と論理的思考を駆使し、一千万円の賞金を獲得した『ルシフェル』という気鋭の配信者でもあります」
黒岩のメガネが、ギラリと冷たい光を反射した。
「高度なビジネスを展開し、完璧な帳簿を作り上げる優秀なIT社長と。
自分の頭で考えることすら放棄し、1行の文章も書けない40歳の無職。
……この二つが、同一人物であるとは、到底考えられません」
「…………ッ!!」
俺は、言葉を失った。
黒岩のロジックは、あまりにも完璧だった。
エリート公務員である彼から見れば、「優秀な経営者」と「底辺の怠惰なおっさん」が、同じ器の中に同居しているなどという状況は、エラー(異常値)でしかないのだ。
「結論として、一つの仮説が成り立ちます」
黒岩は、探偵が犯人を追い詰めるような低い声で言った。
「この『ルシフェル』というVTuber、ならびに株式会社インフィニティ・ワンの実質的な経営者(黒幕)は、別にいる。
そして、目の前にいるあなた……『秋谷雪』という人物は、ただ雇われてこの四畳半に住まわされ、『悲惨な底辺おじさん』というキャラクターを演じさせられているだけの、名義貸しの操り人形なのではないですか?」
「ち、ちがいまああああああす!!!」
俺は、畳の上でバンバンと床を叩きながら絶叫した。
「黒幕なんていません! 俺が社長です! そして、その紙に書いてある情けない40歳も、間違いなく俺なんです!!」
『ルシフェル社長。黒岩調査官の推論は、データと状況証拠に基づいた極めて論理的な帰結です』
イヤホンの向こうで、結愛が氷点下の声で解説を入れる。
『社会的に成功した人間が、かつてあそこまで惨めで、救いようのない怠惰な生活を送っていたという事実(質感)は、エリートの彼には理解の範疇を超えているのです。いわば、あなたの過去が【リアルすぎてフィクションに見えている】状態です』
「そんな馬鹿なことあるかよ!!」
俺は涙目で黒岩を見上げた。
「黒岩さん! 信じてください! 俺は本当に、1行も小説が書けないまま何年も夢だけ見てた、痛いおっさんだったんです!!
今でも、頭が悪いからジェミニ先生に頼りっきりだし、経理だってアシスタントの結愛に丸投げしてるんです!!」
俺は、税務調査を乗り切るために、必死になって『自分の無能さ』を国家権力にアピールするという、前代未聞の自己防衛を行っていた。
普通なら「自分はしっかり経営しています」と優秀さをアピールするところだろう。
だが、俺の場合は逆だ。
「俺は、その紙に書いてある通りの、正真正銘のダメ人間です!」と証明しなければ、脱税の黒幕がいると疑われてしまうのだ。
「……秋谷社長。あなたがもし、本当にこの『40歳の底辺』であると主張するのなら」
黒岩は、全く表情を崩さずに、冷徹な要求を突きつけてきた。
「それを、客観的な事実で証明してください」
「し、証明……?」
「ええ。我々税務署は、証拠主義です。あなたが本当に、この文章に書かれているような生活を送り、そこから急激に売上を伸ばした本人であるという『明確な証明』がなければ、この帳簿の正当性も認めるわけにはいきません」
黒岩の言葉に、俺は絶望的なめまいを覚えた。
証明。
俺が、あの「1行も書けない40歳の無職」であったことを、どうやって証明すればいいんだ?
過去の怠惰な生活なんて、領収書が出るわけでもない。
ただ、帯広の四畳半で、天井のシミを数えながら、何者にもなれない自分に絶望していただけの、空白の時間。
それを、どうやって国家権力に提示すればいいというのだ。
『……ルシフェル社長』
その時、ずっと沈黙を保っていた結愛が、ポツリと、裏回線で口を開いた。
『一つだけ、黒岩調査官の疑念を完全に晴らし、あなたの【圧倒的な質感(底辺の過去)】を証明する、最強の手段が存在します』
「ほ、本当か結愛!? なんだよそれ! 今すぐ教えてくれ!」
俺がすがるように叫ぶと、結愛のタイピング音が、カタカタと冷たく響いた。
『その「お便り」の送り先である、某大手VTuberの動画アーカイブです』
「……え?」
『その方は、配信の中で、あなたのお便りを取り上げ、こう評していました。「この手紙には、圧倒的な40歳高齢無職の『質感』がある」と』
結愛の言葉に、俺の背筋を悪寒が駆け抜けた。
『現在、インフィニティ・ワンの公式問い合わせ窓口に、奇跡的なタイミングで、そのVTuberの運営元から【コラボの打診(逆オファー)】が届いております。
テーマは、「あのお便りの主は、今どうしているのか?」です』
「ま、待て……結愛、お前、まさか……」
『はい。黒岩調査官の目の前で、そのコラボ配信を行いましょう』
結愛は、悪魔のような冷酷さで、俺に究極の選択を突きつけてきた。
『数万人のリスナーの前で、あの「黒歴史のメール」があなた自身の書いた事実であると公言し、その圧倒的な惨めさを披露すること。
それができれば、調査官も「ここまで自分の尊厳を破壊してまで嘘をつく人間はいない」と納得するはずです』
「ふ、ふざけるな!!」
俺は、マイクを握りしめて絶叫した。
「そんな公開処刑ができるか!! 俺は社長だぞ!! 何万人もの前で、『俺は1行も書けない痛いニートでした』なんて告白したら、俺のプライドが完全に死ぬだろ!!」
『プライドと、重加算税(数百万円の罰金)と、税務署からの徹底的な余罪追及。……どちらを取るか、社長の経営判断にお任せします』
結愛の冷徹な正論(という名の脅迫)。
俺は、ゆっくりと顔を上げた。
目の前には、腕を組み、冷ややかな視線で俺を見下ろす税務調査官・黒岩。
手には、俺の尊厳を粉々に砕く、一枚の紙切れ。
「…………」
選択肢など、最初からなかった。
インボイスに怯え、社会保険料に泣き、ついに税務調査の危機に直面した四十歳の底辺社長に、守るべきプライドなど残されているはずがない。
「……く、黒岩さん」
俺は、震える声で、そのエリート調査官に向かって告げた。
「……証明、します。俺が、正真正銘の『底辺』であったということを……この帯広の四畳半から、全世界に向けて……っ!」
資本主義のデスゲームは、ついに「自己の黒歴史を換金(証明)する」という、最もグロテスクで悲惨なフェーズへと突入していった。
次回。帯広の四畳半に、数万人の目撃者と国家権力を集めた、地獄のコラボ配信が幕を開ける。