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予選が終了し、本戦出場者が出そろった。
リオンとシルヴィは予選を通過した。
名簿を見る限りだと、ガ―レットたちも予選を突破したらしい。
とりあえずは予選突破を祝うため、リオン、アリス、シルヴィの三人で街で食事をすることに。
「本当はロゼッタさんも、ここにいるとよかったんだけど…」
「仕方がないですよ。まだ安静にしていないと…」
以前のガ―レットとのトラブルの際に受けた傷。
それがまだ治っていないのだ。
そのため、ロゼッタはまだ病院で安静にしている。
「でも、やっぱり残念だ」
「うん、そうだね」
「また今度、機会があれば誘ってみましょう」
そんな会話をしながら、三人とも食事を楽しむことに。
たまたま目に入った料理屋で食事をする。
また明日以降は試合もあるため、リオン、アリス、シルヴィの三人は酒は飲まないことに。
だが、それでも美味しい料理に舌鼓を打つ。
出てきた料理は、鹿肉のステーキとパン、スープ。
季節の野菜炒め、木の実のパイなど。
どれも絶品だった。
「ふう、満足したね」
「はい、そうですね」
「結構いいものだった」
満面の笑みのリオン、アリス、シルヴィ。
そんな時だった。
店の入口から三人にとって見覚えのある顔が現れる。
その人物は、以前リーブルシティで別れた少女…
エリシアだった。
「久しぶりー!」
元気よく手を振ってくる彼女に、三人も手を振り返す。
どうやら彼女はこの街に滞在していたらしい。
偶然にも、こうして再会することができた。
「どうしてこの国に?」
「実はね…」
そう言って、エリシアは話し始めた。
以前リオンたちも訪れたリーブルシティの貴族であるブルーローズ家。
その主である『ラフィーナ・ブルーローズ』と『リリア・ブルーローズ』の二人の護衛として、この王都に来たらしい。
「え!?ラフィーナ様とリリア様も来ているのか!?」
「うん」
エリシアの言葉を聞いて驚くシルヴィ。
彼女は元々、リーブルシティのブルーローズ家の護衛騎士。
修行としてロゼッタの元にいたが、まさかブルーローズ家の者達が来るとは思わなかった。
シルヴィが不在のため、ブルーローズ家は王都へ行く際に護衛を雇うことにした。
それがエリシアだった。
そうして王都に来たら、偶然にも大会参加者の中に見知った顔を見つけた。
ということだ。
「へえ、そうなんですか」
「すごい偶然だね」
笑いながら言うアリスとエリシア。
一方、シルヴィは複雑な顔をしていた。
ブルーローズ家の者達は彼女にとって上司のような立場だ。
「ラフィーナ様とリリア様は?」
「王都に知り合いがいるからそこに滞在してるみたい」
「そうか…」
「それにしても、まさかここで会えるなんて思わなかったよ」
そうして、四人はしばらく話をすることにした。
追加で軽い食事を頼み、それを食べながら話す。
これまでの旅のこと、ロゼッタとの出会い、様々な魔獣と戦ったこと。
そしてこれからのガ―レットとの戦いについて。
エリシアは熱心に聞いてくれた。
そして、彼女の方からも色々な話を聞いた。
冒険者としての旅の話、故郷の村で起こった事件、そこで出会った人々。
楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
「そっか、じゃあリオンくんとシルヴィちゃんが武術大会にでるんだ」
「ああ、なんとか勝たないと…」
「大丈夫だよ!きっと勝つことができるよ」
「ありがとう」
「ううん、気にしないで。私も応援しているからね」
そう言って、感謝するシルヴィと微笑むエリシア。
そんな中、
「あのさ、一つお願いがあるんだけどいいかな?」
「何ですか?」
「ちょっと手合わせしてほしいなって思って」
「手合わせ?」
「うん、ちょっと興味があってさ」
「ボクは構わないけど…」
チラッとリオンとアリスの方を見る。
さすがに自分だけの判断で戦うのはどうか、と考えたのだろう。
しかしリオンとアリスは軽く頷いた。
特に問題ないようだ。
もちろん、人のいないところで、という前提条件だが。
「わかった。やろう!」
「やった!」
嬉しそうにするエリシア。
そして、すぐに準備に取り掛かる。
店の裏手に回り、そこにある広場へとやってきた。
物置として使われているため、少し乱雑に物が置かれている。
とはいえ、軽く手合せする分には十分な広さがある。
エリシアとシルヴィの二人は向き合い、構えを取る。
「よろしくね」
「こちらこそ」
互いに挨拶を済ませると、早速試合開始だ。
まずはシルヴィが先制攻撃を仕掛ける。
素早い動きで接近すると、拳を繰り出す。
しかし、それをあっさりと回避するエリシア。
そこから蹴りを入れるが、それも簡単に受け止められてしまう。
そのまま押し返される。
「やるね!」
エリシアのけりがシルヴィに直撃する。
しかし、それと同時に攻撃を加えるシルヴィ。
さらに彼女は追撃を仕掛ける。
今度は逆に防戦一方となるエリシア。
だが、それでも決定打を与えることはできていない。
むしろ、逆にどんどん追い詰められているようにすら見える。
「(これは、まずいな…)」
シルヴィは焦り始めていた。
このままではスタミナを消耗するだけだと、直感的に感じていた。
何か打開策はないのかと必死に考える。
その時だった。
シルヴィはふと思い出していた。
かつてロゼッタに言われた言葉を…。
『相手の攻撃をよく見て、自分の攻撃を当てるタイミングを見極めたほうがいい』
「これしかない!」
シルヴィは覚悟を決める。
そして、大きく息を吸い込む。
「すうぅぅっ…」
深く呼吸をして精神統一をする。
そして、一気に駆け出す。
「行くぞぉ!!」
今まで以上のスピードで攻め立てる。
それはまさに電光石火の如く。
一瞬にしてエリシアの目の前まで迫る。
これにはエリシアも驚いた様子だ。
「うお!?」
「はぁあああっ!!」
渾身の一撃を放つシルヴィ。
だが、それでもエリシアは冷静さを崩さない。
シルヴィの攻撃に対してカウンターを仕掛けてくる。
シルヴィの拳に合わせて、エリシアもまた同じようにパンチを打ち込んでくる。
互いの腕が交差する。
どちらが勝つか…!?
と、その時…
「そこまでです!」
二人の戦いをアリスが制止した。
さすがにこれ以上の戦いになると周囲に迷惑がかかる。
そう判断したのだろう。
「はあ~、やっぱりダメだったか…」
シルヴィは残念そうに肩を落とす。
一方のエリシアは笑みを浮かべていた。
握手を交わす二人。
こうして二人の勝負は引き分けに終わった。
この日はとても有意義な時間を過ごすことができた。
「そういえば、エリシアは今日どこに泊まるんだ?」
「う~ん…まだ決めてない!」
「なら、俺たちの泊まってる宿に来ないか?まだ少し空いてるから」
「え、いいの?」
「もちろんだよ!歓迎するよ!」
「わーい!ありがとう!」
リオンの提案に喜ぶエリシア。
それから四人で宿へと向かった。
ちょうど空き部屋があったのでそこに案内することに。
いよいよ明日は大会本戦。
果たして、どのような結末を迎えることになるのか。
それぞれの思いを胸に秘め、夜は更けていく。
そしてついに大会本戦を迎える…
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