そんな事を遺書に視線を落とし思い出していたしのぶを引き戻したのは 背後に響いたカナヲの声だった。
「師範…、私は任務に行って参ります。」
カナヲは律儀に正座をしてしのぶを見ていた。
「…! そうですか。気をつけて下さいね」
しのぶは平然を装いつつ 姉、カナエの様に笑顔を作った。
カナヲはそれを聞けばしのぶに向かって頭を下げ、任務へ向かっていった。
______ それから数週間が経った。
蝶屋敷には甘露寺蜜璃、時透無一郎 、竈門炭治郎、不死川玄弥 の4人の姿があった、彼らは刀鍛冶の里で負傷をして療養生活を送っていた。特に炭治郎は怪我が酷く 身体中の骨が折れまくっている状態だった。蜜璃と無一郎2人の活躍が大きかったものの、誰も死なずに五体満足、更には上弦2体の襲撃を受けたにも関わらず里の被害は最小限に抑えられた事は非常にめでたいことだ。しのぶは先に目を覚ました蜜璃の様子を見に病棟を訪れていた。
「甘露寺さん、体の具合はどうですか?」
しのぶが優しい声でそう告げ蜜璃を見詰めた
「うんッ!!すっごく元気になったわ~ッ♡しのぶちゃんのお陰よッ!」
そう言って笑う彼女の笑顔はしのぶにとってまるで太陽の様に眩しかった。
「それは 良かったですッ。明後日には任務に復帰出来そうですね。」
しのぶは蜜璃の体温を測り、頭の包帯を巻き直せばそう告げた。
その蜜璃が目覚めて半刻もしないうちに無一郎も目を覚ましたと報告が入り、しのぶは今度、無一郎の方へ向かった。
「時透さん。体調は如何ですか?」
蜜璃に告げた様に同じく無一郎にも尋ねる。
「はい。体調は胡蝶さんの治療のお陰でだいぶ良くなりました。」
里で記憶を取り戻した彼の目は以前とは違い澄んでいてキラキラと輝いているように見えた。しかし、しのぶが体温を測れば彼は39度の熱を出していた。
「熱がありますね…。解熱剤を飲んで様子を見て見ましょう」
「…わかりましたッ」
しのぶは無一郎に解熱剤を飲ませ、しばらく休むよう言い渡した。
それから数日もしないうちに2人は全回し、任務へと旅立って行った。
今回は蜜璃だけではなく時透までも、回復の速度が今までの比では無かった。その異様な速さにしのぶは唖然としていた。
その後緊急の柱合会議が開かれ、しのぶはそこに出向いた。煉獄杏寿郎が欠け、宇髄天元が遊郭の任務後柱を引退してから人数は9人から7人まで減少し 何処か寂しささえ感じられた。 そんな中待機をしていると御館様の御内儀、産屋敷あまねが現れた。彼女からは無一郎、蜜璃、炭治郎に現れた”痣”について説明された。痣が出た者は25までに例外なく死ぬと聞かされた。
しかし、しのぶが酷く驚くことは無かった。 しのぶはこの時既にカナエの仇の鬼を倒す為に体内に1年以上前から準備していた高濃度の藤の花の毒が回っている状態で日に日に顔色は悪くなりそれを隠すように化粧を濃くした。
その為、例え自分を犠牲にせず運良くカナエの仇を討ち取り 無惨を死なずに倒して 生き残ったとしても”自分は長くない”と分かっていた為 しのぶは驚かなかった。
唯一、しのぶの中で気がかりだったのは既に痣が発現している 親友である蜜璃、そしてまだ若く未来がある 無一郎の2人だった。
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