「な、なんだって!……ちょっと待て! おまえ、その時一体どうやって助かったんだよ? 相手は呪いの力で人を殺せる幽霊なんだろ?」
「俺を守ってくれる霊能力者がいるんだ。詳しい事情は今は話せないが、俺の妹なんだ。そして沖縄のユタという、不思議な霊的な力を持っている。その妹がその時俺を純の幽霊から守ってくれた……もっとも悟は助けられなかったけど、でもそれは最初からその場所にいなかったからなんだ」
「おまえの妹? おまえ、一人っ子だったんじゃ?」
「だから、いろいろややこしい事情があってずっと俺自身も知らなかったんだよ。とにかくその妹、美紅って名前なんだが、そいつなら純の幽霊と正面から戦える。俺がこうしてまだ生きているのがその証拠だろ?」
「そ、その、おまえの妹が俺を守ってくれるのか?」
「そうだ!もしおまえが殺されたら次はこの俺自身だ。その辺の事はもう分かってるんだろ?」
隆平は力なくうなずいた。目にほんの少しだけ生気が戻ったような感じがした。
「だから俺とその妹がおまえを守る。そのためにおまえの家のすぐそばに待機しておく。純の幽霊が来たらすぐに駆け付けられるようにな。だから、おまえも俺たちに協力してくれないか?」
隆平は突然ぼろぼろと目から涙をこぼし、床にへたりこんで俺の腰のあたりにしがみついてきた。そして大声で俺に言う。
「頼む、だったら俺を助けてくれ! 死にたくないんだ! 死にたくないんだよ!」
「ああ、分かってる。だからとりあえず部屋から出て下に来い。その霊能力者の妹も今ここに来てるんだ。だから、今はおまえは安全だ。だから、なっ」
なんとか隆平をなだめすかして一階のリビングへ連れ出し、俺は改めて母ちゃんと美紅を隆平に紹介した。美紅が例の手から火の玉を出現させる術を見せたら隆平も信じる気になったようだ。
隆平は美紅の足元にひざまずいて「お願いだ、助けて」と何度も何度も繰り返し懇願した。
隆平のお母さんが家の真向かいの空き家を俺たちのために借りてくれていた。俺と母ちゃんと美紅はその家の二階に待機して隆平の家を見張ることになった。






