優しく頭を撫でられる感触に、瞼をあげる
まだ朝ぼらけなのだろう、部屋はほんのり薄暗い
「翔太くん」
落ち着いた優しい眼差しが見つめてる
「めめ……れん?」
「うん、戻ってきたよ」
「…っ!ばか!」
「ごめんね、不安にさせて」
蓮の胸にしがみつく
ぎゅっと抱きしめられて涙が滲む
「昨日のことは?」
「覚えてるよ、1枚ベールを隔てたところで見てるみたいな感覚だけど」
「……無理させやがって」
「ん、ごめん」
「……キスして」
「うん」
触れるだけの柔らかいキス
「怖かったでしょう?」
「…っ!そうだよ…っ!ほんとに!」
ぐわっと感情が昂って、涙が零れ落ちる
そう、怖かった
触れる手の、唇の、肌あたりは蓮なのに、俺を確かめるような触れ方が蓮じゃなくて
的確に狙って熱を上げてくるのに、俺を見る目が蓮じゃなくて
そこにいるのは確かに蓮なのに、やっぱり蓮じゃなくて
熱に浮かされながら、心が冷えていた
3年前の蓮だって愛しい蓮には変わりない
俺を好きになってくれて、気持ちを伝えてくれて、俺が好きになった蓮だ
それでも、それが嬉しいのは3年前の俺であって
今の俺が欲しいのは、今の蓮なのだ
「3年前の俺には、気づいてあげるのは難しいだろうね」
「わかってた。だから……」
「うん。ありがとね、昔の俺を受け止めてくれて」
「……あいつだってお前だからな」
「優しいね、翔太くんは」
「次はなんてあったら、絶対、許さないから」
「うん、ごめんね」
「……もっと抱きしめて」
「うん、翔太くん愛してる」
冷えた心の奥まで熱が入る、息ができる
暖かな愛しさに包まれて、張り詰めていた心が緩む
俺はまた眠りに落ちていった
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