「かんぱーーーい!!」
私は今、レイくんと言う男の子と一緒にお酒を飲んでいる。薄暗い部屋で2人きり。少し気まずく、沈黙が続く…かと思ったが彼が明るく話をしてくれる為、会話が尽きることは無かった。
何故こんなことになっているのかというと……
ーーー
仕事終わりの夕方、疲労とともに買い物を済ませ薄暗い夜道を歩む。 帰りは運が悪く雨が降っており、雨具を忘れた私はコンビニで傘を買うことに。こういうのを無駄な買い物というのか…、と再度実感した。コンビニを出てから、渋々買った傘をさしながら買い物袋を片手に歩いていた。
すると…
突然男の子に声を掛けられた。
「お姉さん……」
背が高く、見た感じ高校生くらいの子が 助けを求めるように震えた声で話しかけてくる。そんな彼を見て、何処か辛い気持ちになった。
「…どうしたの?」
「俺、傘もってなくて……」
下を向き、少し恥ずかしそうに言う彼を見て、無言で傘を渡した。詳しい事情はなにも分からないが、無理に聞かず代わりに手が動いていた。風邪をひいて欲しくないと思っての行動に対して、彼は突然私のさす傘に入ってきた。
「…!?」
予想外の彼の行動に驚いたが、嫌な気はしなかったからあまり気にしないようにした。 しかしこの子をどうしたらいいのだろう…。
「私の家…すぐだけど、来る?」
って、つい家に誘ってしまったけどこれ大丈夫なのか!?通報とかされたり…。でも放っておくことも出来ないし…
「…行きたいっす!」
私の発言に目を輝かせながら彼はそう言った。自分の行動を振り返り、不安になっていたが彼の反応を見て少し安心した。
私たちは1つの傘にくっついて入り、歩き始める。
雨音だけが響く中、緊張しながら帰路を歩む。き、気まずい…何か話題を……
そう考えていると突然彼の手が私の手に触れた。私の持つ買い物袋を無言で持ってくれたのだ。
「あ…ありがとう…」
彼のさりげない気遣いに心臓が高鳴った。荷物を持ってくれた彼は満足気に微笑んでいた。彼の行動で雰囲気が少し柔らかくなったような気がして、それに安心した私は勝手に口が動いていた。
「名前…なんて言うの?」
そう聞くと彼は視線を落として私の方を向いた。不意に綺麗で真っ直ぐな瞳と目線が合う。
「レイ、!レイくんって呼んでほしいっす」
嬉しそうな笑顔でそう言われ何処か微笑ましい気待ちになった。彼のお願いに”わかった”と答えると彼は嬉しそうに再び前を向いた。思ってたよりも元気系なんだな…。最初のイメージとは違く、明るい彼に親近感を覚えた。
先程よりも和やかな雰囲気になった私たちはもうすでに家の前へと辿り着いていた。
「ここ、着いたよ」
「お邪魔しまーす!」
彼はまるで自分の家かのように足に踏み入れ、リビングへと駆けていく。そんな彼の子供のような1面を見て、私は笑みを浮かべながら戸締りをして彼のあとを追った。