その後私は夜ご飯を作り、レイくんとご飯を食べることに。料理は得意ではないため、買ってきたものを軽く温めながら2人分の飲み物を注ぐ。その間レイくんは興味津々に部屋中を見渡していた。その後キッチンから香る匂いに唆られた彼は、机の前に腰を下ろして私のことを待っている様子。料理が並ぶと同時に私たちは手を合わせた。
「「いただきます!」」
お店で購入した惣菜に箸を伸ばした。そのまま口へ運ぶと1日の疲れが癒えるように全身へと染み渡る。食事タイムは私の中で結構上位に入る癒し時間なのだ。ふとレイくんの方を見ると、幸せそうにご飯を頬張っている。お腹がすいていたのか、いい食べっぷりだ。そんな彼の可愛い一面を見て思わず笑みがこぼれる。
「ふふっ…あ、ついてるよ」
「…!? あざっす…」
彼の口元へ手を伸ばし、米粒を掬いあげた。私の行動に対し、彼は驚いたのか少し耳が赤くなっているような…?そのまま彼は目線を逸らしてしまった。部屋の静けさが2人の沈黙を伝えてくる。
「の、飲み物入れてくるね!」
そう言って私はその場から立ち上がり、空のグラスを理由に再びキッチンへと向かった。彼のあんな顔を見たら何故か私まで恥ずかしく感じてしまった。少し熱く感じる自分の体温を冷ますためにも冷蔵庫へと手を掛ける。するとその中には大量の酒缶が入っていた。
「あ……」
そういえば…。この間知らない人に攫われそうになって怖い思いをしたのを思い出した。その腹いせでヤケ買いしたんだった。まだいっぱいあるな、どうしよ。
そんな出来事を思い出していると横からレイくんが顔を出してきた。
「…お酒!? 〇〇好きなんすか?」
「俺も一緒に飲みたいっす」
冷蔵庫の中を見た彼は目を輝かせながら味やパッケージをまじまじと見つめている。丁度消費したいと思った私は彼のお願いを承諾し、手一杯にお酒を抱えて食卓へと運んだ。
ーーー
そして冒頭へ至る。
彼とたわいも無い会話をしながら、お酒を飲んで盛り上がっていた。少しアルコールが回ってきた私は何故大量に酒を買ったのかを彼に話し始めた。
「ーーーでさ〜!ほんとにやばかったの!!」
「触られそうになって怖かった〜!」
お酒のおかげか、すらすらと言葉が出てくる。この嫌な思い出を少しでも誰かに共感して欲しかった。普段は言い難いことでも今ならなんでも話せるような気がした。そんな私の止まらない話を聞く彼はそっと傍に近寄ってきた。
「…大変だったっすね」
そう言って私の頭を撫でる。彼の優しい声と表情で私に寄り添ってくれて段々目の縁が熱くなる。その大きな手に包まれて一瞬で安心感を得た。彼とは出会ったばっかなのに。あまり彼のことも知らないのに。今はただ、彼の傍に居たいと思った。
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