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君と見つけた片割れ時の一等星

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君と見つけた片割れ時の一等星

24 - 2-05 きらきらに目が行く問題児

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2024年10月09日

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「なァ、なァ。星埜。これって、目がでっかくなるっていう箱だろ」

「目がでっかくなる箱って……えっと」

「プリクラのことじゃない?」



楓音が、俺の隣で朔蒔の質問を補足する。

朔蒔は、興味津々といった様子で機械を見つめていて、その黒い瞳はきらきらと輝いているように見えた。

結局、あれからカラオケに行くことになったのだが、カラオケボックスに向かう前に、フードコートで軽食をとってから……と言う流れだったのだが、その前にゲームセンターに勝手に朔蒔がいってしまったため、追いついて今にいたる。



(ゲーセンとかきたことないのか?)



俺も言うほどきたことないが、まるで初めて目にするように、子供が初めて遊園地に連れて行って貰った時みたいな反応をするものだから拍子抜けした。矢っ張り、中身は子供なんじゃないかと、暴力行為に走るところを抜きにしてみれば、可愛い子供……やんちゃな子供だと見れなくも無いと思った。



(いや、性欲の凄い子供とか嫌だぞ。俺)



矢っ張り、全てを訂正する。可愛くはない。子供だ。と、俺は朔蒔のことを見ながら思う。それでも、そんな子供から目を離せない自分がいるのもまた事実だった。

引力があるというか、インパクトがあるというか。彼の言葉を借りるのであれば、運命と言わざる終えないほど彼に惹かれていた。認めたくないが。



「最近のプリクラって凄いんだよ。別人になっちゃうって言うのは、変わってないけど」



と、そう口を挟んだのは楓音だった。楓音はこういうの好きそうだなあ、とプリクラを女子と撮っている楓音を想像し、少しにやけてしまった。別に下心とかそう言うんじゃなくて、単純に可愛いんだろうなって言う妄想で。


それに気づいたのか、楓音はにま~とした顔で俺を見てきた。



「何~星埜くん」

「いや、別に。楓音らしいなって思って」

「そう?僕らしいか。そう言って貰えるの何か嬉しいかも。最近は、プリクラじゃなくてスマホでも可愛く盛れちゃうからさプリクラに並ぶっていうのないけど、少し前までは並んでたんだよ?」

「へ、へえ。そうなんだ」



楓音はよくプリクラを撮るんだ、と言う感想しか出てこなかったが、嬉しそうに話している楓音を見ているとそれだけで満たされるような気がした。それをよく思っていなかったのか、朔蒔が俺の肩に腕を乗せる。



「うわ、いきなり何だよ」

「せっかくだから、とろーぜ。星埜」

「とるって、プリクラをか?」



そうに決まってんじゃん。と言う顔で朔蒔に見られてしまい、これは拒否権ないな、とすぐに諦めた。でも、朔蒔と2人でとるなんて絶対嫌だと、俺は楓音を見る。楓音はキョトンとした大きな瞳で俺を見た後、「僕も一緒で良い?」と聞いてくれる。俺は、朔蒔に対し、楓音も一緒じゃないととらないぞと言う目を送ってやれば、渋々といった感じで朔蒔は受け入れた。



(以外と、素直だな。此奴)



そんなことを思いつつ、朔蒔がいった「星埜に嫌われたくない」という言葉を思い出した。本気にしていなかったが、あの言葉が本気だったらと考えると軽く流してしまった過去の自分を恥じたかった。そう言っているうちに、プリクラの撮影ボックスに押し込まれ、可愛らしい音楽が流れる。



「なァなァ、どんなポーズすんの?」

「どんなって……」



俺に聞かれても分からない。朔蒔も俺もプリクラ初心者で、もっと言えば、写真なんて普段撮らないからピースしか思いつかなかった。俺達が言い合っているのを見てか、楓音が、「こう」と、手のひらを上にしたピースをつきだした。



「最近はやってるポーズはこれ」

「逆ピース?」

「ギャルピース」



と、楓音は訂正しつつ、もうすぐシャッター押されるから早くと、急かされ、俺は戸惑いながらもぎこちないギャルピースとやらをつくる。朔蒔はノリノリなようで、俺達よりも一回り大きいので後ろから俺と楓音を抱え込むようにしてギャルピースをしていた。どんな風に取れているかは、あとから確認すれば良い。



「次はどんなポーズにするんだ?」

「各々好きなポーズと、顔でいいと思うよ。朔蒔くん乗り気だね」

「そりゃ、初めてだからな。友達と遊びに来るのって」



そう、朔蒔はニヤリと笑って言う。でも、何処か無邪気さが残っていて、その言葉が嘘ではないというのはすぐに分かった。



(そもそも、此奴に友達がいたかどうかも怪しいが)



朔蒔に友達がいるイメージがつかない、そう思いながら、俺は二人に合わせてポーズや表情を変えた。



「星埜最後だぞ~ちゃんと笑えよ!」

「ちょっ」



ぐっと腰を引き寄せられて、思わず声が出てしまう。その間にも、パシャリとシャッターが切られる。どんな顔してたとか、考える余裕もなくて、朔蒔の腕の中から逃げようと必死にもがいた。しかし、朔蒔の力は強く、全くと言って抜け出せなくて、逆に密着する形になってしまい、写真がぶれてしまったんじゃないかとあとから思った。

撮影も終わり、異様に目が大きくなった写真に書き込みを入れるブースに移動する。そこで朔蒔は人生初のプリクラに大はしゃぎで、「めできんじゃん」とか腹を抱えて笑っていた。だが、しっかり描込んで原形をとどめていない写真が出来てしまった。



「これ、俺宝物にするわ」

「勝手にしろよ」



出てきた写真を切り取って、朔蒔はスマホケースの中に入れるとニカッと白い歯を見せて笑った。もう、この時点でかなりお腹いっぱいだった。

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