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スタジオに入ると、見覚えのある顔がチラホラ
「2人共、おはよ〜」
俺達が入って来た事に、1番最初に気付いたラウールが声を掛けて来る
「おはよう…って照、俺を呼びに来てくれたんじゃなかったの?」
渡辺が岩本を驚いた顔で見る
「……え〜っと」
そういえば、渡辺が先程そんな事を言っていた気がする…
岩本が肯定も否定もせずにいたせいで
少々、行き違いがあったらしい
「えっ、岩本君…今、ここに来たばかりだよね?」
ラウールの言葉に頷いて見せると
渡辺が、怪訝な顔で見つめて来た
「俺もさっき来たばかりで…偶然、翔太の姿が見えたから声を掛けただけだけど」
「なら、最初から言えよ…」
「言う暇なかったし」
「もぉ〜」
2人のやりとりを見ていたラウールが笑い、それにつられて俺達も笑う…
こうしていると、先程の渡辺の姿が嘘の様に思えて来る
『翔太、凄いな…』
今の渡辺を見て…どれだけの人間が気付く事が出来るのだろうか…
辛そうで悲しそうで…今にも泣いてしまいそうに見えたのは、岩本の見間違いでは決して無い
そんな想いを胸に秘め…周囲に気付かれない様、平静を装うその姿に
岩本は、胸の奥が熱くなるのを感じた
◇◆◇◆
着々と本日の仕事をこなしていき
あっという間に昼になる…
「今日は外に食べに行こうぜ〜」
誰が言い出したのか分からないが
昼飯を、外に食べに行こうという話になった
「あれ?翔太は?」
佐久間が渡辺の姿が見えない事に気づいて、声を出すと
「さっき、飲み物買いに行くって言ってたよ」
阿部が、そう教えてくれた
「俺、探して来るから…その間に良い店探しいといて」
「OKよろしく〜」
今朝の事もあり、気になった岩本は渡辺を探しに部屋を出る
飲み物を買いに行くと言っていたのだから、きっと自販機の近くにいるのだろう
そう思って、この場所から一番近い自販機の設置されている場所へ向かう
『あっ、居た…』
意外とあっさり見つける事が出来、声を掛けようと近付くと
「しょ……っ!」
口を開き掛けて、息を呑む…
自販機の影に隠れる様にして佇む、渡辺の肩が小さく震えていた…
背中越しで表情までは見えないものの
声を殺しているのだろうか…鼻を啜る小さな音と、しゃくり上げる様な息遣いが聞こえて来た
「………」
岩本は、無言でスマホを取り出すと…
スタジオで帰りを待っているであろうメンバー達に向けて
自分達の、不参加を伝えるLINEを打ち込み送信した…