テラーノベル
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横浜——かつて神崎を追い詰め、海へと沈めた因縁の地。
だが、今の俺を待ち受けていたのは、潮風の爽やかさなど微塵もない
コンクリートと鉄錆が支配する「地下刑務所」の冷気だった。
そこは、表向きは閉鎖されたはずの旧三和会関連施設。
だがその実態は、『黒い百合』が私設の拷問場として再利用している暗黒の聖域だ。
志摩が消え、警察の目すら届かないこの場所に、山城は幽閉されている。
「……ここか」
俺は夜陰に乗じ、かつて山城がトラックで突っ込んだ外壁の亀裂——
今は無骨な鉄板で塞がれた場所の前に立った。
腰には一本の脇差と、ゴールデン街の老婆から譲り受けた特殊な振動カッターを携えている。
――ジィィィ、と微かな音を立てて鉄板が焼き切れる。
内部に滑り込むと、そこには最新の電子機器と、古びた拷問器具が混在する異様な光景が広がっていた。
「……誰だ」
暗闇の中から、迷彩服を纏った傭兵が現れる。
神崎の部下よりもさらに洗練された、一切の感情を排した殺戮機械。
俺は言葉を返さず、脇差を抜き放った。
一閃。
相手が銃を構えるより速く、俺は奴の懐に潜り込み、喉元を真一文字に切り裂いた。
音もなく崩れ落ちる体。
俺は返り血を拭う間もなく、さらに奥へと進む。
地下3階
冷気がさらに深まる最奥の独房で、俺は変わり果てた山城の姿を見た。
椅子に縛り付けられ、頭には電気信号を読み取るための不気味な装置が取り付けられている。
「山城!しっかりしろ!」
「……兄、貴…っ?ゆ、夢……じゃ、ねえ……」
山城の声は掠れ、瞳には絶望が張り付いていた。
「逃げ…てくだ、さい……。俺の頭の中に…親父さんの『隠し場所』のデータが……奴ら、それを……」
「隠し場所だと?」
その時、独房のスピーカーから、上品だが歪んだ笑い声が響いた。
「素晴らしい。友情、信頼、そして再会。……すべてが私の計算通りだ、黒嵜和貴君」
モニターに映し出されたのは、顔を真っ白な仮面で覆った男。
その胸元には、紛れもなく『黒い百合』の紋章があった。
「大河内も神崎も、所詮は表層の道具に過ぎない。君の親父――榊原が盗んだ『国の種子』。それを取り戻すための最後の鍵は、君の血と、その若者の記憶の中にあったというわけだ」
通路の前後がシャッターで閉ざされ、毒ガスのような煙が噴き出し始める。
「……お前ら、どこまで親父を追い詰めるつもりだ」
「追い詰めたのではない。我々は、彼を『原点』に戻そうとしているだけだ」
意識が混濁し始める中、俺は山城を縛る鎖を力任せに引きちぎった。
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