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ワンクッション
眼前の四人だけでなく、背後と左右に現れた敵は、確実に侵入者の退路を断っていた。
「……ほーん。大したもんやな、お前ら」
「おう。大したもんやろ」
「『Z≪ツェット≫』って呼んだらいいか、『ゾム』呼んだらいいかわからんが……。とにかく大人しくしといてな?」
「…………」
Zと呼ばれた侵入者は訝しげに思った。
これほどまでに訓練されたリージョンなのに、まとまりを感じない。何よりターゲットの思考が読めない。
ターゲットであるエーミールを目の端で追うと、いつの間にかスーツの内ポケットに手が伸びてた。彼の仲間は、エーミールの動きに気付いていない。
……。ほーん。
Zがエーミールの思惑に気付いたのと同時に、ショッピが何かに気付き、焦ったような大声を上げた。
「あっ……!!」
「…やっばッ! 煙幕盗られた!!」
「すまない、ショッピ君!!」
エーミールが言うが早いか、取り出した煙幕弾の導線を引くと、Zの足元に投げた。
「ゾムさんッ!逃げてくれッ!!」
瞬時に一帯は濃い煙に覆われ、皆の視界が奪われた。
「うっわ…! 何やこら」
「……あー。何やわからんが、武器盗られたし状況悪なったから、一旦撤退するわ。ほな」
Zの気配が消えていく。
「逃がすかッ!」
シャオロンがZを追おうとすると、オスマンが制止する。
「追うな、シャオちゃん!!」
「ショッピ君とげどちゃんは、エミちゃんの確保!各自状況報告!」
「増援コネシマ、いまーす」
「同じく増援シャオロン、煙いですー」
「増援組チーノ、生きてまーす」
「ひとらんらん、ショッピ君。エーミール先生の確保完了」
「エミさん、抵抗なし。生きてまーす」
「ごくろうさーん。ほな、片付けと次の襲撃に備えてー。げどちゃん歩ける?すぐ医務室行ってね。ショッピ君はエミちゃんを『特別室』にご案内~」
「りょーかーい」
「わかりましたー」
「はい。じゃあ行きますよ~、教授」
「……」
腕を後ろに捻りあげられ、後ろ手に手錠をかけられたエーミールは、抵抗することなくショッピに引かれるまま歩いた。
『特別室』に向かうエーミールの横に、オスマンが足を進めた。
「やってくれちゃったね、エミちゃん」
「……。冷静で情報収集能力も高い、計画にも無駄がない、事後処理の指示も的確。そんな貴方が、どうして参謀長を降りたのですか?」
「めう。めんどくさかったから」
「…………」
「まあアレやね~。優秀な後釜来たし、擦り付けちゃおっかなって」
「期待に添えず、申し訳ありませんでした」
「処遇については、グルちゃんが決める事で、ボクが決めることやないからね」
「彼は気分屋なところはあるけど、政治は公正であれと思ってるよ。昔、エミちゃんがグルちゃんに教えたいうてた…何やっけ、『価値の…』」
「『価値の権威的配分』ですね。確かにそんな話しました」
「それね。ともあれ、今回のやらかしについては、ボクはフォローできひんよ」
「わかってます」
「変な方向に思い切りエエよな、この教授は」
ショッピは、諦観の意を込め、小さな溜め息を吐いた。
【続く】