うなだれる私を見かねてか、
「少し庭の方へ出てみないか」
と、彼が促す。
「でも、パーティーの主役であるあなたが、ここを離れるのは……」
気持ちの整理がなかなかつけられずに、力なくまた首を横に振る。
「私の心配はいい、あらかじめスタッフには伝えておくから。先ほどのステージで、私も少し身体が熱くなっているので、外で冷ましたいんだが、付き合ってもらえるだろうか?」
こちらを優しく気づかうような紳士的な誘いかけにほだされ、「はい」と首を縦に頷くと、落ち込みかけていた気持ちが、にわかに快方に向かうのを感じて、彼の言動ひとつでこんなにも翻弄されていることに、自分自身でも少なからず驚いていた……。
ホールの外庭に出ると、「すまなかったな」と、彼が口にした。
「何を謝られて……」
確かに落ち込んではいたけれど、私が勝手にそう感じていただけでもあった。
「君を、不安にさせただろう。今も、そして初顔合わせでも……。あれからずっと考えていたんだ、どうしたら挽回ができるだろうかと。だが、二度目のせっかくの偶然にも、私は失態を取り戻すことができずに……」
「失態だなんて……」彼もずっと気にしていたんだと思う。
「だから今日こそはと、気を張っていたんだが……」
自分と全く同じように彼の方も考えていたことを、思いがけなくも感じる。
「すまない、私が至らないばかりに」
「そんなに、謝られないでください」
「そうか、すまないな」
再びそう口にする彼に、クスッと笑いがこぼれる。
すると、「ああ、私はまた……」と、彼も吊られるように笑みを浮かべた。
空気がふっと和むのを感じて、「……だけど、さっきも少し話したのですが、あなたが会う度に素っ気なく感じられたのは、たぶん私を好きではないからなんだろうと思っていて」──ずっとはっきりとは言い出せないでいたことを、彼へ明かした。
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