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第1話 とある古ぼけた学校の入学式
「生徒会長、挨拶」
まだ少し、風はひやりとしていて夏になるにはまだ遠い。それでも太陽は、生徒を照らすように煌々と輝いていて、今は春だと主張している。窓から覗く太陽の光が体育館をぽかぽかと温めていて、このまま心地よく眠ってしまいそうだ。私は雨女だからと両親が少しばかり心配していたけれど、それも杞憂に終わったようだ。
ちょっと、ちょっとだけ。こんなに天気が良くてお昼寝日和なんだから。なんて自分に言い訳をして、目を閉じる。そのうちだんだん声が遠ざかっていって、
「辻森 悠希」
「……ぁ、はい」
寝る、、。なんて思って半分意識を飛ばしていると、いつの間にやら式は点呼に移っていた。急に名前を呼ばれたもんだから一瞬自分のことかどうか分からなくなってしまった。実は居眠りしていて反応できませんでしたなんてバレたら入学早々、目をつけられるに違いない。
それだけは勘弁。すでに見られてないよな?なんて、怖くなって周りを見渡す。
背筋を伸ばして前を向く生徒、私のように夢の中にいる生徒、点呼をしている教師、禿げている司会の教師、出入口の階段に立つ黒い人。
良かった。誰も私が寝ているところは見ていなそうだ。ほっとした私は再び夢の中に旅立つ。
――
「これで、入学式を終わります。」
その典型文とともに、今日最大のイベントである入学式が終わった。流石に1時間も拘束されていれば疲れは溜まるし、ましてや式典でずっと体も強ばらせていれば、生徒は1度ぐーっと伸びて体を解そうとするのも致し方ない。ないと思うのだが、のろのろと移動をする1年生を見かねて、あの禿げた先生が喝を飛ばす。
まあ、古い学校だからなのか若干古ぼけた先生も多そうだ。
私も列に続いて体育館を出ようと、階段の方をちらりと見る。相も変わらず、黒い人は階段の上に立っていた。
「邪魔だなぁ。」
そう呟いた言葉は、たまたま後ろにいた人に聞かれていたようで怪訝な顔をされてしまった。が、その子も釣られて視線を動かした。階段に焦点が合った瞬間、固まってしまった。
「あれ、なに?」
そう尋ねてくる彼の目は、まるで知らない、異国のものを見たかのように疑問で覆われていて、少しばかりの恐怖も混じっていた。
「この学校は古いから。」
なんて答えになっていないような答えを返して、私は1歩踏み出す。あまりああいうのには関わらない方がいいし、出来れば知らないまま見えないままの方がいいのだ。彼も初めは意味がわからんみたいな表情をしていたが、私が進むと慌てて着いてきた。
幸い、黒い人は両開きの出入口の端っこに居たから、私たちは反対側を通った。なるべく視界に入れないように。
階段を降り終えた時、彼の様子を見ようと振り返る。緊張はしていたものの、意外と肝が据わっているのかもう変にビビることなく前を向いていた。視界の端で黒いなにかが揺れた気がした。
「もう、大丈夫。」
新学期だから。ここはもう、令和だから。だから、大丈夫。彼は一瞬私を見たけど、振り返らずに歩き始めた。
太陽は未だに輝いていた。
コメント
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あの〜、バグってプロフの画像変えれないんですけど、どうしよ。