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「見えたっ!見えたよっ!」

幼児聖奈はテンション高く指をさした。

その方角には、地平線…いや、薄っすらとだが水平線が見えた。

あれから二日。

一応探索の意味も込めて、ファフニールにはゆっくりと飛んでもらっていたが、やはり真新しい発見はなかった。

そして、ファフニールの言っていたように、二日目にして海へと辿り着いたんだ。

この二日、ファフニールには悪いが、俺達は地球で寝て過ごし、ファフニールは転移魔法を使い山へと帰しそこで寝てもらっていた。

コンもそうだが、使徒とはいえ、異世界転移に耐えられるというものでもないらしい。

まぁコンは兎も角トカゲは目立つから、出来たとしても連れては帰れないが。

「大自然だな…」

いや、元々大自然しかなかったよ?

でも、語彙力が無いんだ。察してくれ。

「結局何も見つけられませんでしたね」

「そうだ……いや、それだとファフニールが…」

ミランの言葉に納得仕掛けたが、それだとあんまりだ。

こんなにも便利な仲間が増えたのだから、決して無駄ではなかったのだよ。うん。

「そういえば…ファフニール。ファフニールは海竜について何か知っているのか?」

『む。その名は聞いた覚えがある。しかし、実際に見たことはないな。聞いたと言っても、余のダンジョンに人が来ていた頃の話だしのぅ』

つまり、役立たずってことだなっ!

というか同じ竜でも知らないんだな。

「聖奈。どうする?」

目的地の一つであった東海岸へ出ることができた。

その上空でファフニールは指示待ちの為にホバリングしている。

この後どうするのかを、考えがありそうな者へと聞いてみた。

「とりあえず魔力歪みの壁があるから、西海岸は放置出来るね。よって、この大陸に進出する為には、東海岸にいい場所を見つけないとダメだから、その探索かな?」

「じゃあ、明日からはその探索をしよう。今日はどうする?」

「セイくんは船を持ってきてくれるかな?そうすればファフちゃんも一緒にいられるし、どうせ明日からは船で元の大陸を目指さないといけないしね」

ん?ファフニールに乗って、元の大陸へ帰らないのか?

「海図を作る為ですか?」

「うん。こっちに引っ越した後、元の大陸に干渉しないって言ったけど、交流は出来たらしたいからね!」

なるほどな……

俺達が死んだ後、こっちの進んだ文明で元の大陸に向かえば、侵略戦争が起こってしまうだろう。

人とはそんなものだし。

それを起こさない為にも、初めから国交を結んでおけば、俺達亡き後でも下手なことは起こりづらいからな。

「交流さえしていれば…時間ができた時に異世界美少女と……へっへっへっ…」

……私利私欲かよ……

ミランが甲斐甲斐しく聖奈の涎を拭き、ルナ様はドン引きしていた。

鼻血を出しそうな聖奈をミランに預け、月が出たので、俺は一人地球へと転移していった。






「ここは良いね!」

翌日。船を魔物がいない海域へと放置して、ファフニールの背に乗り東海岸を巡っていた。

遥か下の東海岸は三日月型の湾になっており、湾内は波が穏やかでかなりの広さがあった。

「ここなら港町として、元々の地形を活かした大きな貿易拠点になるよ!」

街づくりシミュレーションゲームかな?

俺は苦手だからしていないが、聖奈は好きそうだ。

だが、これはゲームではない。

生きた人というのは、時として不条理な動きを見せる。

普通はそういった者達のイレギュラーも考えないといけないのだが、聖奈は考える必要がないと考えている。

理由は、そんな人達には俺やファフニールといった抑止力があるからだ。

歪んだ流れは、俺達のような強者を使い真っ直ぐ叩き直す。

それがこれまでの俺達のやり方で、恐らくこれからもその方針なのだろう。

バーランド王国も初めは力で押さえ付けた。

今は暮らしやすさと便利さ安全性を兼ね備えているから、俺という抑止力は必要なくなっている。

そんな抑止力が不必要になるまで、王国でも何年と掛かった。

聖奈が目指す大陸作りはもっと壮大で長大な計画なのだろう。

少なくとも、俺の寿命よりも。

場所は見つかった。

後は無事に帰り、この長い遠足を終わらせるだけとなった。






「よーし!出発進こーう!!」

幼女聖奈の掛け声と共に、船は東へと進んでいく。

初めての船に身体を小さくしたファフニールは落ち着きなくウロウロとしているが、放っておこう。

長旅になるからその内慣れるだろう。

「このまま真っ直ぐ東でいいか?」

「そうだね。海流もあるからその辺りも海図に書き込むけど、行かないことにはわからないからね」

海流もあるし、海竜も…ププッ。

口に出したら絶対バカにされるからやめておこう。

「元の大陸に着くまでは、どれくらい掛かると思う?」

「全然見当もつかないよ。もしかしたら、大きな他の大陸がまだあるかもしれないし、無くてもこっち側の方が離れているかもしれないしね」

「そりゃそうか」

世界地図も無けりゃ衛星写真もない。

さらには海図も。


こちら方面の方が離れているという、ルナ様の口ぶりだったが、それは勘定には入れていない。

憶測は危険を孕むからな。


この世界も地球と同じ物理法則が適用されていれば、世界の大きさは計算できるだろうが、そんな計算はしたくはない。

それをするくらいなら、ミランとゲームをする時間に充てたいな。

最近は色々とやることが多くて、構ってやれていないからな。

「セイくんは船の操縦と海竜を見つけることに専念していてね」

「わかってる。船を壊されでもしたら大損害だからな」

何せ何億もしたんだからっ!

海竜がどんなものかは知らないが、当たっただけでも沈没しそうだしな。

ソナーでも魔力波でも、しっかりと索敵はしておかないと。






東へと真っ直ぐ進む航海は、予想よりも順調に進んでいた。

途中で東へと向かう海流にも乗れたし、大きな岩礁などもなかった。

ファフニールはこれまでずっと一人きりで寝ていたから、船でも同じように静かに過ごしてくれていたしな。

何も問題はない。

「穏やかだねぇ」

「そうだな。ゆっくり釣りでもしたいが、それはまた次の機会だな」

そう言う奴は結局しないんだよな……

次の機会次の機会と言ってる間に、そんな気が起きなくなる。

まぁ今時間がないのは本当だから仕方ないが。

「今は半分くらいまで来てるよね?」

「その予定だ。この世界の広さがわからないことには正確なことはいえないけどな」

最初の航海の時の半分くらいの距離は近づけている。

西回りと東回りの距離が同じくらいだと仮定したならば、残すは半分なんだけど、そう上手くはいかないだろう……

この世界は人が生きるには厳しいからな。




そこからさらに一日後。




俺達の視線の先には、知らない大陸が存在していた。

「アレは中央大陸じゃないよね?」

「だろうな…」

画像

だって明らかに活火山があるからな。

中央大陸にもあるのかも知れないが、俺は聞いたことがない。

しかも……

「何か飛んでますね」

「どう見ても鳥じゃないな」

「ジュ◯シックパークかな?」

島なのか大陸なのかわからないが、噴煙を上げる活火山があり、恐竜のようなモノが空を飛び回っているのが見受けられた。

「とりあえず転移してみる。みんなはここで待っていてくれ」

「うん。ファフちゃんに乗っていく手もあるけど、それが良さそうだね」

「わかりました。お気をつけて」

あれだけ空飛ぶ何かがいるんだ。

ファフニールに乗っていくと、あっという間に乱戦になってしまうだろう。

俺は二人に船を任せ、見えている岸に向けて転移魔法を発動させた。




『ギャォォ』『ガァァッ』

「…完全にジュラ期へとタイムスリップしたな」

島には夏の蝉のように、怪物達の鳴き声が木霊していた。

魔力波を飛ばして確認すると、やはり皆魔力を持っているようで、恐竜とは似て非なる存在のようだ。

「とりあえず進んでみよう。もしかしたら人が住んでいるかもしれないからな」

森というよりはジャングルと化している森林地帯へ向けて、俺は慎重に歩き始めた。

待っているのは何なのか。

「これが俺の望んだ旅」


だと良いな……

〜ぼっちの月の神様の使徒〜

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