テラーノベル
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十一話目は少しショッキングですが読んでください
生体処理工場の作業員たちを肉片へと変え、その「骨張った腕」を背中から生やした直後、私の肉体に異変が起きた。 急激な悪寒。100回目の少年の肉体が、内側からカチカチと激しく凍りつき始める。「――あ、が、あァッ……!?」 私は血塗れの床に膝を突いた。 喉の奥から、せり上がってきたのは血ではない。ドロドロとした、光を一切反射しない漆黒の「タール状の液体」だった。それが鼻や目からもドボドボと溢れ出し、石畳の血の海を真っ黒に染めていく。 体内へ侵入させた黒い影――『ナニカ』の暴走だった。「おまえの……なか……おいしい……もっと……もっと……ちょうだい……」 脳の裏側から響くナニカの声は、先ほどまでの無邪気さを失い、底なしの飢餓感に狂っていた。 ナニカは私の体内で、過剰に摂取した作業員たちの肉エネルギーに当てられ、巨大化していた。私の影であったはずの黒いシミが、私の皮膚を内側からメリメリと押し広げ、全身の毛穴という毛穴から「真っ白な人間の歯」をニョキニョキと突き出させていく。 私の100回目の自我が、急速に削り取られていく。 ナニカの影の粘膜に触れた私の五感が、1つ、また1つと漆黒の虚無へと消滅していくのが分かった。このままでは、世界のシステムを壊す前に、私はこの『ナニカ』というバグの消しカスに内側から全てを喰い尽くされ、完全な無(む)の塊にされてしまう。「……調子に、乗るなよ……化け物が……!」 私は薄れゆく意識の底で、100回分の記憶の引き出しを乱暴にこじ開けた。 検索したのは、第52回目の人生。大国を裏から支配し、数々のおぞましい怨霊や呪怪を呪符一枚で使役した、歴史に名高い『稀代の狂陰陽師』だった時の記憶だ。(我が肉体は九十九の死霊を統べる器! 有象無象の影ごときに、主の座を譲ると思うかッ!!) 私は辛うじて動く右腕――第12回目の親友の死体の手を、自らの胸元へと突き立てた。 指先が少年の皮膚をズブズブと引き裂き、肋骨の隙間を潜り抜けて、まだ動いている自分の生の心臓を直接、素手で「グシャリ」と鷲掴みにする。「ガハッ……ア、アァァァッ!!」 脳が弾け飛ぶほどの激痛。だが、これでいい。 私は心臓を握った右手の指に、かつて極めた陰陽術の『生血の封印術式』を刻み込んだ。自分の心臓から溢れ出る新鮮な鮮血を媒介にし、自らの肉体そのものを「怪異を閉じ込める監獄(ケージ)」へと作り変える禁忌の術だ。 ドクン、と心臓が激しく脈打つ。 私の全身の血管に、呪いの混ざった血が高速で逆流し始めた。その血が、体内を這い回るナニカの影を、網のようにギュウギュウと締め付け、拘束していく。『あ、つい……痛い、痛いよォ……! おまえ、なにするの……!?』 ナニカの悲鳴が脳内に響き渡る。 私の毛穴から飛び出していた無数の白い歯が、バキバキと音を立てて砕け散り、体内の影が私の脊髄の奥へと強引に押し戻されていく。私は自らの心臓を握り潰さんばかりに力を込め、ナニカの核を、私の魂の「奴隷」として精神の最底辺へと縛り付けた。「カハッ、ハァ、ハァ……」 右手を胸から引き抜く。傷口からは黒いタールではなく、どす黒い人間の血がドクドクと溢れ、床の生肉を濡らした。 ナニカの暴走は収まった。私の足元の影の中で、ナニカの白い歯が、今度は恐怖でガチガチと小さく震えている。「思い知ったか、ナニカ。お前の飼い主が誰かを、二度と忘れるな」「……うん……ごめんなさい……おまえ……こわい……でも……すき……」 辛うじて主導権を維持したものの、私の肉体は自身の呪術とナニカの侵食によって、ボロボロに損壊していた。引き裂かれた胸の隙間からは、絶えず肉の焼けるような煙が上がっている。 その時、コンベアの最奥にある巨大な鉄の扉が、ギギギ……と重低音を立ててゆっくりと開いた。 扉の向こうから漂ってきたのは、これまでの比ではない、脳を麻痺させるほどの濃厚な「腐敗と硝酸の臭い」――。 街のシステムを統べる、工場の主(マザーコア)が、ついにその全貌を現そうとしていた。
コメント
1件
マジでヤバかった……!!😭💥 主人公が自分の心臓を直接掴んで封印術を発動するとか、痛すぎて読んでるこっちまで息止まったよ…!!「こわい……でも……すき……」って震えるナニカにもうグッときたし、まさかのマザーコア登場で終わるの反則でしょ!!次回が待ちきれなさすぎる〜〜🥺💕
榎本くもり
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Sea Otter2026
38
NAL
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