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『ミッションの依頼だ。雇い主はいつもの組織。エージェントを一人転属させる。そいつは先のミッションで指令を無視して作戦を台無しにした責任でそちらに移動ということになっている。現場指揮官からも越権行為の報告が来ている。扱いきれないとな。狂犬だが、腕は確かだ。そいつをファーストクラスまで育て上げて欲しい』
「装備は?」
『全てこちらで支給する』
「報酬は?」
『現金一括払いのファーストクラス三ヶ月分の活動資金。これに加え、ボーナスを設定する』
「うん、文句ないよ。それで」
『では頼んだぞ、鮮花』
「司令も体を大切に」
ぶつりと通信が切れる。そうすると人のいない喫茶店にはテレビの音声がより明確に響き始める。
《支援したのは今や匿名支援の代名詞であるノー・キリストという謎の人物》
《まさに人の善意によってこのたびの歴史的快挙がもたらされたのである》
《またしてもですか。人の善意が歴史を作ったのですね》
《ノーの支援を受けた者の共通点はこの梟のチャームのみ。スポーツ選手以外にも研究者や芸術家など世界中で様々な分野の天才がノーの支援を受け…》
ノー・キリスト。
パノプティコン機関の名乗る存在。
私に機械の心臓をくれた救世主だ。救世主は私に神様から与えられた才能というギフトを使えといった。私はそれに従い、自身の強力な才能を殺人に転用して、平和な国を作った。私がしたのは殺しだけだが、それを支援したい組織はたくさんあった。
そして、私は金払いの良い平和主義者の手を取った。その結果、日本は世界で一番平和な国になり、裏では凶悪犯を始末するエージェントが目を光らせて治安の安定が図られた。
さて、今日来るエージェントはどんな子なのだろうか。殺しは好きなのだろうか? それとも仕事だからやっているのだろうか? そもそも善悪を超越した洗脳教育をされているのだろうか。
好きな食べ物は? 嫌いな食べ物は?
有名人やニュースに興味はある?
漫画やアニメは好き? それとも実写映画のほうが好きなのだろうか?
先生以外とは喫茶店のお客さんと雑談する程度の仲だ。こうやって裏の仕事を手伝う、手伝わられることは少ない。だって報酬減るし、足で纏いだからだ。
その時だった。ドアがノックされたのは。
「本日配属になりましたアレクシア・フレーバーです」
「来たか。アレクシア」
先生ことクロックがコーヒーを入れながら呟く。先生は黒人で、体が大きい男の人だ。片足が動かず杖をついているが、あれはブラフだ。
怪我をしている方が油断させやすい。
日常生活では不便だが、もしもの時に必殺の武器になる。
「組織クビになったってエージェントさん、喫茶店アーネンエルベにいらっしゃ~い」
「クビじゃないです」
クビじゃない(食い気味)
「あなたから学べ、との命令です。鮮花さん。転属は本意ではありませんが東京で一番のエージェントから学べる機会が得られて光栄です。この現場で自分を高めて本部への復帰を果たしたいと思っています」
「はい、よろしくね〜」
「ここの管理者のクロックだ」
「アレクシア・フレーバーです」
「あ、先生大変! 食べモグの口コミでこの店ホールスタッフがかわいいって~。これ私の事だよね?」
「おお、凄いじゃないか」
「やったぜ。高い金と手間をかけているのは無駄ではなかった」
女の子が可愛くなるには金と手間がかかる。短時間で膨大な収入を得ている私だからできる芸当なのだ。
「あの……」
「今日からお互い相棒だ。仲良くしろ」
「よろしく相棒! 鮮花で~す!」
「アレクシア・フレーバーです…」
「よろし…」
「アレクシア! 初めましてよろしくね!」
「あ…はい…去年京都から転属になったばかりで……」
「お~転属組!優秀なのね歳は?」
「16です」
「私が1つお姉ちゃんか~。けど「さん」はいらないからねあ・ざ・かでオッケ~」
「はぁ……」
おっと勢いでしゃべりまくってしまった。引いてるかな? 顔にガーゼを貼ってるのは傷ついたからだろうけど、顔は嫌だねぇ。
跡が残らないと良いけど。
「この前のアレすごかったね~。その顔は名誉の負傷?」
「いえ……」
言い淀む。ワケありか。触れないほうが無難かな。
「よし早速仕事に行こうアレクシア!」
「はい!」
「あ。先生のコーヒー飲んでからでいいよ~。すごくおいしいから。私着替えて来るね。ごゆっくり~」
と、そこで思い出して、後ろに顔を向ける。
「あっ、アレクシア!」
「はい!」
「アーネンエルベへようこそ」
私がいなくなった後、たきなにつけた盗聴器で会話を盗み聞く。いつもやってる方法だ。こうやって盗聴器をばら撒いて、情報を敵より先にで入れる。染み付いた習慣だった。
それに情報の精査はアラン機関が作成した超大型スーパー自律コンピューター・パノプティコンシステムがやってくれる。
私がするのは種を撒くだけだ。
「鮮花さんはどうして組織にいないんですか?」
着替えが終わって、偽装制服に手を通した私達は二人でパトロールがてら手頃な仕事するために道を歩いていた。
「イレギュラー……だからだよ」
「優秀なリエージェントと伺ってます」
「司令さんがそう言ってた!?」
「はい。あれも鮮花さんの仕事だと……」
「あ~……いや壊したのは私じゃないよ!?」
「旧テクノロジータワーを一人でテロリストから守ったエージェントは地方でも有名ですよ」
「あ……そう? でも結局壊れちゃってるしね。優秀なエージェントは組織にいる人だと思います」
「私もそのはずでした」
「移転組は優秀じゃないとなれないしねぇ。例の銃取引? なんだかんだで商品は抑えられたんでしょ?」
「いえ。なかったんです」
「えっ?」
「銃が消えた? 量は?」
「情報によれば約千丁です」
「笑えねぇ。はは……戦争でもやるの、日本で?」