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目の前には、ノッカー付きの両開の扉が
僕達を待ち構えていた。
金具さえも錆ついては、扉は煤けている。
「そんなにこの扉が珍しいですか?」
僕は、その声にハッとする。
「早く早く!頭上をご覧あれよ巨人さん!」
「そうそう。プラネタリウムがここからも見えるはず…」
小人達の急かす声に
僕は頭上を見上げた。
…ラン…ランッ…。
絵画に縁取られたようなプラネタリウムが
鮮明な色と輝きを保っていた。
「ここだけは屋敷の上から下まで吹き抜けみたいになってるんだよな」
「それを言うのであれば、下から上まででは?」
「論点はそこじゃないんじゃないー?」
僕もこの光景は初めて見るものだった。
主様がいた時には、
こんなものはなかったと思う。
「あれはなんで作られたんだっけな…」
「あれは前の主が残したものじゃなかったかしら?」
「え、覚えていないんですか。僕らの祖先がとある人にこれを見せるためだったじゃないですか」
「なにそれ。覚えてないしー」
不意にブローチに触れた時だった。
「ない…またなくなってる…」
本来であれば、
丸みを帯びたガーネットがそこにあるはずだった。
僕の指はそれを突き抜け、
空になった枠を撫でるばかりだった。
…。
…。
「巨人さんが何か探してるっぽい?」
「見ればわかんだろ。宝石だろ。手が遊んでる」
「そんな…でも僕たちが降りてくるまでは、確かにあったはず…」
…。
…。
つかまされたのだ。
…。
二度目の出来事に僕は、
彼らを懲らしめてやろうと思うのだった。
「巨人さん…?大丈夫?」
小人が僕の鼻先をつついているようだった。
「ダメだ、巨人さんこれ。多分相当怒ってるかも」
「だからどうした。怒らせておけばいいではないか。我らは奪っていないのだからな」
「奪ったかどうかにポイントを当てちゃダメだと思うな〜」
「そうだぜ、落としてなくしたかもしれないんだ。奪われたなんて言うなよな」
すぐそばに聞こえる彼らの声。
僕は小人達への復讐を考えていた。
手始めに、
鼻に乗っているらしき小人を掴み取る。
「んな!何をするんですか巨人さん!」
手の中からそれは聞こえる。
小人一人を優しく握りしめたまま、
玄関横に置きっぱなしにされた
空の植木鉢を片手に取る。
「巨人殿は正気ですかな!?」
「ちょっとおやめなさい!そんな乱暴な真似はしないで下さる?」
「僕たちの仲間が捕まっちゃうなぁ。困ったなぁ」
植木鉢の中に入ったままの
埃や土を軽く振り落としては
その中に捕まえていた小人を入れた。
「これは酷い!そんな、巨人殿。それはあんまりだ!」
「勘違いも甚だしいぞ!」
「盗んでいないと言ったろ!聞こえてないのかよ!」
避難の声がそこら中から聞こえてくる。
僕はそれを、
全力で振り払った。
鼻息を飛ばし、
腕や脚を左右に振り上げる。
暴君さながらに、
僕の身体を乗り回していた彼らを振り落とす。
僕がそれから目を閉じることはなかった。
…。
…。
玄関には、カーペットが敷かれていた。
それも質のいいであろう高級品。
灰色に染まってはいたが、
振り落とされた小人達は怪我はしないだろう。
それに、檻のように被せた植木鉢。
前方にいた彼らには分からなかったかもしれないが、
ちゃんと出れるように、
小石を挟んでおいた。
あの
閉じ込められた小人は
今頃外に出ている事だろう。
そんな無駄な気を、
彼らが気付くことはないだろう。
僕は、一つの可能性をかけ
道を戻っていた。
それは、小人が言っていた落とした可能性だ。
一度外れたものは、何度も起こりやすい。