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10 - 第10話 光の向こう

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2025年12月05日

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海の向こうに花の姿はもうなかった。

結衣は浜辺に座り、波が靴を濡らすのも気づかずに、静かに息を整えていた。

心の奥は痛いけれど、もやもやはない。

花が自分で選んだ道を、結衣は受け入れていたからだ。


手の中のヘアゴムは、まだ温もりを残しているように感じられた。

握るたび、花の小さな笑顔と、柔らかい声が浮かぶ。

『結衣……ありがとう。』

その言葉だけで、結衣は救われた気がした。


朝日が波に反射して、海を金色に染める。

光は強くて、冷たくて、でも美しかった。

結衣は立ち上がり、海を見つめる。

花はもうここにはいない。

けれど、光の向こうにいる気がした。


静かに、結衣は海岸線を歩き出す。

波が足元を洗うたび、花の存在を思い出す。

泣きたくなるほど悲しい。

でも、悲しみは美しい。

花の最後の優しさを感じられるから。


「さようなら、花。」

声に力はなくても、胸の奥で確かに響いた。

もう振り返らない。

これ以上のことは、誰も変えられない。


砂浜には波の音だけが残り、

風が結衣の髪をそっと揺らす。

痛みはあるけれど、清らかで、静かで、

これが二人の最後の時間だった。


結衣は歩きながら、心の中で何度も花の名前を呼ぶ。

届かなくても、もうそれでいい。

花が選んだことを尊重できることが、結衣にとっての愛の証明だったから。


波が光を揺らす。

海は何も変わらない。

でも結衣の胸の痛みは、確かに生きていた。

それだけで、十分だった。


もう、

いつもどうりに生きれないだろうけど一一

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