テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
1件
読了しました……第3話、とても不思議で魅力的な回でしたね。特に「ぜーんぶ、お前の自由だから」というアオイくんの台詞が心に残りました。自分の存在すら相手の解釈に委ねるような、ふわっとした距離感が独特で。雨だけが急に降って、海斗くんだけが濡れている描写も、現実と非現実の境目があやふやになっていく感じがしてぞくぞくしました。次が気になります……!
翔くんが「実はあのベンチの血痕、鑑定結果がおかしいんだ」と新たな情報を持って俺の家にやって来た。俺は先に言う。
「大昔のだったの?」
翔くんは目見開いた。
「えっと、誰かから聞いた?」
ビンゴみたいだ。
翔くんは続けた。
「君の言う通り、DNAがね。なんかおかしいらしくて。人間の血液であることは間違いないし、生物としての構造も地球のものなんだけど……鑑定に回した鑑識の人が言うには、まるで『何千年も前の化石から抽出したDNA』みたいに、一部の塩基配列が異常に劣化というか、風化しているように見えるんだって。生きてる人間から今しがた流れた血のはずなのに、時間が狂ってるみたいだって首を傾げてた」
翌日、俺もう一度ベンチへ行こうと思って道を歩く。
「黒髪、赤い瞳、崖前のベンチ…。」
特に関係する情報は脳内から引き出せない。
すると、背後から声がした。
「呼んだか?」
バッと後ろを振り向くと、一昨日の青年。
驚いた。あれ、今晴れてるのに…。
──いや違う。気づけば雨が降っている。
土砂降りじゃないか。
傘を持っていたけど開くのも煩わしくて、濡れるのもお構い無しに聞いた。
「君、名前なんて言うの?」
「アオイ。」
「アオイ…それは苗字?名前?」
「苗字かもしれないし、名前かもしれない。」
「君は何歳?学生?」
「学生かもしれないし、大人かもしれない。」
なんか、歯切れが悪いな。
自分のことなのに。
「お前の名前は?」
彼が聞く。俺は躊躇った。
こういうのに名前教えたら、ダメな気がするけど…。
「……海斗。原西海斗。」
「ふーん。まあ興味ないけど」
「(冷たぁ…)」
そして彼はベンチに向かって歩いた。
足音が聞こえない気がするのは、この土砂降りの雨のせいか。
「そのベンチ、血が付いてるから気をつけたほうが良いよ」
「ん?付いてないけど」
「え?」
見れば、確かに付いていない。
翔くん達が全部拭き取ったのかな。
俺は気を取り直して彼に言った。
「ねぇ、傘ささないの?」
「言ったでしょ。俺は雨男なんだ」
「雨男ってさ、『血の雨』と関係あるの?」
「あるかもしれないし、ないかもしれない。」
俺は少し苛立った。
「どうしてそういう言い方するの?」
彼はじっと俺を見て、数拍後言った。
「ぜーんぶ、お前の自由だから」
「え?」
素っ頓狂な声をあげる。
「お前が『アオイ』を苗字と思うなら苗字だ。学生と思うなら学生だ。血の雨と関係あると思うならあるんだ。」
俺は彼…アオイくんと暫く目を合わせていた。逸らしちゃいけない気がする。
逸らしちゃ、逸らしちゃ…。
「あ、海斗!ちょっといいかな!」
遠くから翔くんに呼ばれた。
ハッとして振り返ると、気づけば雨がピタッと止んでいる。
慌ててもう一度ベンチを見ると、もうアオイくんはいなかった。その代わり、ベンチより少し離れた崖側の方にまた血が滲んでいる。
黒い。直前まで無かったのに、乾きかけているのはどういうことか。
翔くんが走ってきて、首を傾げた。
「あれ?ねぇ海斗、なんで濡れてるの?」
#いじめ
名瀬口にぼし
316
264
#魔道具職人
こはる
1,637
45
「だって、雨が振ってたから…」
翔くんは怪訝そうに目をひそめる。
「今日、ずっと晴れてるよね?」