テラーノベル
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俺は脳をフル回転させて言った。
「海に落っこちちゃって。」
「ええ?海斗ってそんなにドジだっけ…って、あ!また血痕!」
翔くんの注意はすぐに血に行った。
ひとまずホッとする。
二人で血を採取し、すぐ警察へ向かった。
その間ずっと、俺は考えていた。
アオイくんの言葉について。
──ぜーんぶ、お前の自由だから。
やがて梅雨の時期は過ぎた。雨はあまり降らなくなり、降っても小雨程度。
俺が、正直アオイくんのことを忘れかけていたある日のことだ。
学校で職員室の前を通った時ふと目に入った、古い古い、ただのメモみたいな紙。
わざわざ目立つよう、額縁に飾られている。
『蒼井高良の眠る崖に』
俺は前の人にぶつかりかけ、慌てて避ける。
理科の福島先生だった。
「どうしたんだい原西さん。らしくないね。」
「あ、ごめんなさい…。あの、福島先生。この『蒼井高良』って、どういう…?」
福島先生は驚いたようだ。
「(これは、まさか…!)」
先生に静かに、しかし興奮を隠しきれないと言ったように問いかけられる。
「……原西さん。君はこの間の雨の日、何を知ったんだい?」
「この間、って…」
「警報級の大雨の日だ」
今度は俺が驚く。先生、何かを知っている。
「……あの、崖上のベンチで、彼を見ました」
先生は目を見開き、しかし「ふぅ…」と、1つ息を吐いた。
まるで自分を落ち着かせるように。
「すまないが、私も多くは知らない。私は本校出身なのだが、入学したその時にはこのメモ洋紙はすでにあった…かもしれない。」
「“かも”、と言うのは…」
「私も気になって調べたことがあるんだ。蒼井高良。昔、実際に存在した青年の名前だよ。ただ、若くして海で溺死したとか。その彼“自身”のメモが、何らかの理由でこのように飾られている。校長に聞いてみなさい。きっとこう返ってくるよ。『そんなものあったか』、と。」
俺は目を見開いた。それって、つまり…。
「このメモは、ここに飾られている時と飾られていない時がある。私が学生時代、友人を連れてきて指を指して見せようとしても不可能だったのをよく覚えているよ。蒼井高良はこの紙を、」
──僕らにしか見せてくれないんだ。
俺の心臓がドクンと跳ねる。
「と、いうことは、先生はこれは現実のオカルトだと考えるんですか…?」
「私一人が見えていた時は、そうは思わなかった。再現性がないからね。でも、二人目(君)が現れてしまったからにはそうはいかない」
先生は「私が彼を初めて見たのは、本校の中庭だ」と、過去の遭遇について話した。
「最初は気にも留めていなかったんだが、どこか壊れそうなのに興味を唆られてね。話しかけて傘を貸そうかと泣け無しの優しさを使ったら、『雨男だから要らない』だそうだ」
雨男だから。同じ。
「雨が止むと、中庭には乾いた血が黒く染み付いていてちょっとした事件になった。」
乾いた血。同じ。
「気味が悪くて自分でDNAを鑑定してみたら、昔のものだった。」
昔のもの。同じ。
「次の大雨の日、彼は校門に移動していた」
移動。同じ。
「話をしてみると、彼はこう言った。」
「──『ぜーんぶ、お前の自由だから』」
俺は先に言った。先生は笑う。
「どうやら同じ経験をしているようだね」
「はい。唯一違うのは、……俺が彼を見たのはあの、海に近いベンチだということです。」
先生は目を見開いた。
「学校の廊下、校門、崖上のベンチ…。そうか、彼は『移動』しているんじゃない!」
急に大声を出され、俺はびっくりする。
周りを見るが人はいなくて安心した。
しかしその後、すぐにまた緊張を戻される。
「彼は還ろうとしているんだ…!自分が命を落とした、あの終わりの海へ…!」
「い、命を落とした?彼はあの崖で死んだんですか?」
「あぁ。死因は自殺らしい。あの崖から飛び降りた。そして彼はまた、観測者である私たちの意識を足場にして一歩ずつ──」
「じ、じゃあ、もし、次にあそこに彼が現れたら……!!」
俺の言葉が終わる前に、職員室のチャイムがけたたましく鳴り響いた。
しかし、俺達の耳にはそんな音は届いていない。窓ガラスを激しく叩く雨音が、まるでカウントダウンの鼓動のように廊下に響き渡っていた。
コメント
1件
おお、めっちゃゾクゾクしたわ…!先生も同じ体験してたってのがまず熱いし、「還ろうとしてる」って解釈、めちゃくちゃしっくりきた。「ぜーんぶ、お前の自由だから」って台詞がまた何度も出てきて、その度に意味が深まっていく感じがたまらん。ラストの雨音カウントダウン、次がヤバそうで続きが気になって仕方ない🔥
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