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風花🎧🫧🥀@中学受験生
219
かんな
123
「副長ォォォ!! 助けてください、もう俺は限界です!!」
執務室の襖がものすごい勢いで開き、山崎退が文字通り泣き崩れながら滑り込んできた。
その手には、溢れんばかりのチョコレートの箱やラッピングされた袋が抱えられている。
近藤が呆気に取られていると、山崎は床に拳を打ち付けながら、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにして訴え出た。
「屯所の郵便受けが……郵便受けがもう破裂寸前なんです!全部、沖田隊長と副長宛の甘味でいっぱいなんですよ!なんでですか!? なんで毎年毎年、この二人のためだけに、俺が腱鞘炎になる一歩手前まで郵便受けを往復しなきゃいけないんですか!? 整理がめんどくさすぎるんですよォォォ!!」
山崎の慟哭はそれだけに留まらない。
むしろ、ここからが本音だった。
「だいたい、おかしいでしょうが! 同じ真選組隊士なのに、なんで俺のところには薄っぺらいチラシ一枚入ってないんですか!? ゼロですよ、ゼロ! 義理チョコの一欠片も、地元の母親からの仕送りすら届いてねぇよちくしょうォォォ!!」
「お、おい、ザキ……落ち着け……」
近藤が引き気味に宥めようとするが、山崎の耳には届かない。
その傍らで、土方は凄まじい不機嫌さを全身からオーラとして放ち始めていた。
ただでさえ、懐にある「渡せなかった本命チョコ」のせいで胸が焼け付くように苦しいのだ。
それなのに、山崎が持ち込んできた「他の女からの大量のチョコ」という現実が、土方のイライラを最高潮に沸点へと押し上げる。
(ったく、どいつもこいつもバカ騒ぎしやがって……! そんなもん、全部ゴミ箱に叩き込むか、総悟の野郎に全部食わせて鼻血吹かせとけよ!)
土方は額に青筋を浮かべ、懐の銀紙の箱をさらに奥へとねじ込んだ。
万事屋が「女から貰った方が嬉しい」だろうと思って身を引いた自分と、今ここに届いている大量の「女からのチョコ」。
その対比が、土方のプライドと行き場のない恋心を容赦なくすり潰していく。
こんなものを見せつけられたら、余計にあいつに渡せるわけがない。
イライラと、それ以上の惨めさが混ざり合い、土方は煙草をこれでもかと激しく吸い殻入れに揉み消した。
一方、二人の様子を見ていた近藤は、純粋に感嘆の息を漏らしていた。
「いやぁ、やっぱりトシと総悟は凄いなぁ! 真選組の二大看板だけあって、街の娘さんたちからの人気は絶大じゃないか。ザキ、そんなに泣くな。男の手入れが行き届いている証拠だ。これだけ慕われているトシなら、きっと自分で買ったそのチョコの相手だって……」
近藤は土方の横顔をチラリと見た。
これほどモテるトシが、わざわざ自分でチョコを買い、それを誰にも渡せずに、まるで世界が終わったかのような顔で懐に隠している。
(……トシ。お前がそこまで一途に、苦しくなるほど想っている相手は、一体どんな奴なんだ?)
恋愛の機微は分からなくとも、近藤には分かった。
山崎が泣き喚く「大量の義理やファンからのチョコ」なんて、今のトシにとっては塵芥に等しい。
トシが欲しているのは、世界中でただ一つ、あの懐にある銀色の箱を受け取ってくれる「誰か」の笑顔だけなのだと。
真選組の執務室は、山崎の嫉妬の号泣と、土方の冷酷な殺気、そして近藤の深い察しの眼差しという、奇妙に入り混じった空気に包まれていくのだった。
コメント
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寺島あおいです🌷 山崎さんの慟哭から始まる第3話、めちゃくちゃ面白かったです!「同じ隊士なのに俺のところにはゼロ」って叫ぶ山崎に笑いながらも、その裏で土方さんが「渡せなかった本命チョコ」を必死に隠してる切なさがたまらない…。近藤さんの「トシが欲しいのはたった一つの笑顔だけ」っていう気づき、じんときました。他の女からのチョコなんて塵芥って描写が、土方さんの一途さを引き立ててて好きです。続き、土方さんはあのチョコ、どうするんだろう…!