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第一章 情けない過去
ロシアSide
「ははっ、俺って最悪だな…」
俺は自傷気味に嗤った。なぜなら、ずるくて、ずるくてずるくてずるくてずるくてずるくてずるくてずるくてずるいフィンランドに当たってしまったから。そんなフィンランドは、恍惚とした表情を浮かべている。
『あぁ、ロシアは最悪だよ。…けど、それ以上に可愛いし愛おしいよ…♡』
そんなことを言われてしまっては、あんなずるさも許してしまう。あぁ、いつからだろう。こんなことになってしまったのは。
俺には自由がない。俺がフィンランドから離れれば、可愛い顔で殴ってくる。抱き合うときは、低くて安心する声。そして、可愛らしい喘ぎ。
ずっと灰色の部屋に閉じ込められ、最低限の家具は置かれている。ど真ん中には、大きな椅子。
この時の俺は、まだ全然フィンランドを愛せていない。
とにかく、今は最悪だ。フィンランドに当たってばかり。
……
なぜこんなことになっているかって?そりゃ、俺とフィンランドの相性がいいからだ。自慢ではないが、俺はモテる。いや、これは自慢だな。イケメンで、クール。運動神経も頭もいい。好きな人には尽くしまくる。最高でしょ?
そんな俺はモテていて、元々人気だったフィンランドの人気を奪ってしまったのだ。それで、とても嫌われていた。だが、とある日をきっかけにフィンランドに目をつけられてしまったのだ。
そこからは―
…いや、やめておこう。しかし、俺も元々はこんなにイケメンじゃなかったし…なにもかもがダメだった。好きな人なんていなかったし、不登校だった。
こんな日々を送る前のことは教えなければいけないだろう。俺の昔の話を、教えてやるよ。
情けない過去を。
「…………はぁ。」
俺は今、自室のベッドで寝転んで天井を眺めている。今日は月曜日。そして、時刻は朝の8時だ。
遅刻?そんなの知ったこっちゃない。だって、俺は”不登校”なんだから。学校に行ったところで、意味がない。
本当なら学校に行きたいし、不登校なんてやめたい。けれど、俺が不登校になったのには理由があった。虐められたとかじゃない。精神的に病んだとかでもない。面白くないわけでもない。
―ただ、自分が嫌なのだ。
皆はそれを聞くと、口を揃えて言う。
『自分らしくいればいい。』
と、そういうのだ。だが、俺は違う。こころに響かないし、納得もしない。なぜなら、その”自分らしさ”が俺にはないから。普通の人のような性格で、顔で、運動神経で。好きなことなんてないし、好きな人もいない。
不登校なこと以外普通な俺。
「自分らしく」とはなにか、俺だって何回も考えてきた。自分の好きなように生きること?自分勝手に生きること?自分がしたいことだけして生きること?
どれも、俺には響かない。そんなの、ただの自己中だから。なりたい自分になんてなってしまったら、皆はもっと俺のことを嫌うだろう。
だから、俺は今日も変わらずに引き籠もっている。
「…暇だな。」
突然だが、皆には好きな趣味はあるのだろうか。好きなことはあるか?自分の好きなことはあるか?
大体の人はここで、「部活」「読書」「料理」など。自分の得意なことや、没頭できるものを言うだろう。だが、そんなものは俺にはない。ゲームも、漫画を読むのも。飽きたのだ。ゲームは面白くないし、漫画は読み飽きた。映画も長すぎて面倒くさい。なにもすることがない。
なら、学校に行けって話だよな。知ってる。けど、学校に行くたびに自己嫌悪に陥ってしまう。
ほら、SNSと一緒だよ。他の人は楽しそうにしてるのに、自分は部屋でSNSを読み漁ってる。こんなことしてていいのか、自分はダメだ…なんて思っておきながら、行動には移さない。それと一緒。
結局、人は皆一緒だ。心から優しい人なんていない。全員、利益しか考えていない。働いている人は、金のおかげで働いている。学校では、褒められたり友達といれる、そして頭が良くなるから。他でもそうだ。
俺も、そう。変わろうとする気はない。学校にも面倒くさいから行かない。…単位を落とさないギリギリで。
入学式からはずっと色んなオリエンテーションとか、部活紹介とか多すぎるんだよ。締め切り物めっちゃ多いし。
…親は、心配してくれるんだ。でも、深くは入り浸ってこない。それが好きだった。同時に、こんな俺の親でいいのかって思った。男手一つで育ててくれた、父さん。その名前は―ソ連。正式名称、ソビエト連邦。さらにちゃんというと、ソビエト社会主義共和国連連邦。凄く長いが、かっこいい名前だろ?俺と一緒のロシア”連邦”がついてるんだ。
父さんは昔からずっと優しかったな。まぁ、俺はその優しさを貰っても行動しないけど。
「…あ、そうだ。」
俺はなにかを思い出し、そのまま本棚へと向かった。自慢だが、俺の国では有名な小説家が多いんだ。面白いし、それを知って小説はたくさん見ている。最近はほぼ全部読んでなくなってきたな…
そういえば、父さんも何冊か持ってたはず。
久しぶりに部屋から出て、父さんの部屋を探す。何ヶ月か出てなかったのもあるが、そもそも父さんの部屋には何年も行っていない。小さい頃、好奇心に負けて入った時以来だ。そのときは怒られたが、すぐに甘やかしてくれた。
コンコン…ガチャ…
部屋を開けると、父さんがパソコンを開いて仕事をしていた。…仕事なのか?
『…おぉ、どうしたんだロシア。』
(…父さんの声、やっぱり落ち着くなぁ…)
「ちょっとさ、小説ほぼ読み終えちゃって。」
父さんが何冊か持っていたはず、
あと父さんに会いたかったということを伝えると、父さんはうれしそうに笑った。…まぁ、小説なんて好きで読んでいるわけではない。暇つぶしだ。
『…えーっと…これくらいか?』
十数冊の小説を父さんがくれた。俺は何冊か厳選し、お礼を言ってそのまま自室に戻った。
自室に戻った俺は、父さんから貰った小説を何冊か見ていた。やっぱり、面白くない。こんなことなら学校に行ってたほうが色々楽なんじゃないか?いやでも…
めっちゃ普通に面倒くさい。そもそも、早起きするのも無理。制服とか着たくない。
(けどな〜…やっぱり家は暇なんだよな…)
さて、どうしようか。俺は何もしたくないが、家は暇。とんだ矛盾をしている。数ヶ月くらい外に出てないし…
しばらく悩んでいると、父さんがノックをし、ゆっくりとドアを開けて入ってきた。俺は父さんに駆け寄る。なぜかって?父さんがなにかを話したそうにしていたから。
「父さん、どうしたんだ?」
…あれ、嫌な予感がする。
『お前も、もう中学3年生だ。受験勉強はいいとして…最後の年くらい、少しでもいいから行ってみないか?』
「………最後の年くらい…」
まじか、父さんまでこんなことを言うようになってしまった。いや、今までが異常だったのだろう。流石に少しは行ったほうがいいらしい。
ずっと育ててくれた父さんにも、悪いとは思っていた。だから、少しは行ってみようかな。まだ春だし、大丈夫だろ。
「…わかった。実は俺も、行こうかなって悩んでたんだよ。」
その言葉を聞いた父さんの目がキラキラと光った。いつもはクールなくせに、こういうときは分かりやすい。…かわいいな。
『…っ!本当か!俺も応援するし、相談とかも乗るからな!いじめとか受けたら侵略しにいくから言えよ!』
うわぁ…
まぁとにかく、父さんがこんなに喜んでくれるのなら学校にだって行ってやる。さて、明日は火曜日。くそ面倒くさいから、金曜日に行こう。そのためには、準備が必要だな。準備は終わらせておこうか。
金曜日 7:24
とは言ったものの、少し怖いし面倒くさい。今日1日行けばすぐに休みだ、だから大丈夫…
そう思ってた俺がバカだった。
学校に着くと、俺は靴を自分の番号の靴箱に直し、家から持ってきた上履きを履いた。なんせ、今年はまだ一回も学校に行ったことはなかった。まだ4月後半らへんだからいいだろう。
それはどうでもいいのだ。とにかく、廊下を通るたびに皆からの冷たい目でひそひそ話をされるのが怖い。絶対悪目立ちしてるだろ、これ…
っていうのもまぁ、まだマシだ。もっと余計なのがある。厄介だし、まじで最悪だ。
―くそ陽キャなアメリカとか言う奴に目をつけられた。どんな感じかを紹介してやろう。
『あれ?君初めましてだよな?!?オレアメリカ!!仲良くしてくれよな〜!!』
この言葉を無視したのだ。うるさいし、そもそも俺に話しかけてないと思った。そこからはましまでしつこかった。
『ねぇ〜なんで無視するんだよ!!そんなに俺のこと嫌い…???』
「きもい。」
『酷くないっ?!?!』
『HAHA☆ロシアChanはかわうぃ〜ね〜♡』
「きも…」
『やっぱひどいよね?!』
ちなみに、まだ1限目も始まっていない。朝の段階でこれだ。さらに最悪なことがある。
こいつと同じクラスだと言うことだ。
今年は俺に罰が返ってきているのかもしれない。父さんに言ったらどうなるのか…
今日は俺の中で一番大変そうだ。
キンコンカンコーン
ようやく5限目が終わった。あと1限…くそ長い。そんなに勉強せずに少ししてただけというのもあって、よくわからない。例えるなら、どこかの言語をペラペラと話されてる感じ。
そして、ここまで過ごしてわかったことがある。アメリカというやつは、いわば人気者らしい。そして、問題児。とんだ肩書だ。
しかし、問題児と言っても校則を破るとか、喧嘩をするとかそういう悪い意味ではない。
良い意味での問題児なのだ。とにかく、休み時間はうるさい。授業中はちゃんと真剣に聞くし、メリハリがちゃんとできているのだ。俺みたいな陰キャ…というのは失礼だが、そういう人たちにも声をかけまくっている。アメリカというやつは、自分の軸を保っているのだ。
…俺とは真反対だな。やっぱり、俺はこのままではダメな気がする。でも、どうすればいいのか分からない。…頭の片隅では、どうでもいいと思っている俺もいる。
一旦今日を乗り切ることを目標にしよう。
キンコンカンコーン
(やっと…下校だ…)
俺がげっそりしながら机に突っ伏すると、アメリカがすぐさま駆け寄ってきた。まるで飼い主に懐きすぎている犬みたい。
『なぁなぁ、ロシアChan!!一緒に帰らね?同じ方向か知らないけど!!』
相変わらず元気だ。同じ方向か分からないくせに誘ってきたのかよ…
「…うるさいから嫌だ。あとロシアChan呼びやめろ。」
『むーり♡』
「うぇ…」
なんか、なんだろう…普通の友達とのじゃれ合いみたいになっている気がする。小学生以来かもな…こんなことするの。だが…
帰り道一緒に帰ることになったんだ。そして、俺はアメリカと一緒に帰路についた。どうやら途中まで方向は一緒らしい。
俺がぼーっとしながら歩いていたら耳元で叫んでくるし、なんか気持ち悪いけどウインクしてくる。俺の元気が吸い取られていくような…
アメリカは本当にびっくりするほど苛つくやつで、なぜか安心感がある。だから、俺は嫌がりながらも結局別れ道まで一緒に話して帰った。
途中で別れて、自分の家へと向かう。
(…あれ、父さんじゃね?)
父さんがドアの前で立っており、煙草を吸っている。それだけで絵になる父さんの顔面偏差値が羨ましい。父さんが俺を視界に入れた瞬間、涙ぐんでいた。俺が慌てて駆け寄ると、抱きついてくる。…いや、抱きしめられた。
「んぐっ…、ちょ、父さん、?」
『ロシア…!!お前、もしかしてさっきの友達か…?!』
(…友達?)
あ、もしかしてだけどアメリカのことなのかもしれない。あいつは声がでかいから、充分聞こえるだろう。
「まぁ…うん。」
『…父さん嬉しいぞ…!!ちゅーしてやろうか^^』
「ゑ」
本当に父さんがキスしようとしてきたので、ナチスさんを呼んで父さんの相手をさせた。
夜になったら、2人の甘い声が聞こえてきたのはココだけの話…
俺は風呂やご飯を済ませ、ベッドにどさりと入る。もう11時。久しぶりに外に出たし、ちょっと楽しかったな。
明日は土曜日か…ゆっくりするのは前提として、来週は行こうかな…
…よし、行こう。
日曜日になって準備するのは余裕がなくなって忘れ物をしたり、面倒くさくなって行かなくなると思ったからすぐに準備をした。
こういう時の自分の行動力を褒めたい。
明日は土曜日。安心して眠りにつける。少しだけ小説を読んだ。そして電気を消し、ベッドへと体を放り投げた。疲れた体は、ゆっくりと力を抜いて意識を手放した。
コメント
10件
あ、あ、甘い声?!いったいどっちがどっちなんだ…と、言いたいところですが、ここは自分の心に素直になって、勝手にナチソにさせていただきました!この時点ではまだアメリカのことが嫌いなロシアがどんな感情を育んでいくのか気になりますね…頑張ってください!
見るのを遅れてしまったぁぁぁ😭 そして相変わらず今回も神作品ですね!!アメリカとロシアの絡み めっちゃ好き!💕ソ連とナチスも あってめっちゃ神!次回も楽しみに しています!
あ”あ”あ”あ”ッッッ好きです…こういうノベルならではのお洒落な表現がものすごく好きなんですよ私ッッ!!!!!それとロシアさんが小説読んでる設定めちゃくちゃ好きです…♡♡ソビさんが小説貸してあげるシーンもお洒落な親子って感じがしてエモくて死んでます😇 それとアメリカさんがロシアさんに声掛けまくってるのほんと尊いです…私の個人的な意見なんですがアメロシ派なので呼んだ時悶えまくってました(◜¬◝ )