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静かな夜。
ノアは、施設の図書室にいた。
分厚い魔導書を、ぼんやりと眺めている。
「……“核”と同波長の人間は、
周囲の魔力を暴走させる……”
ページをめくる。
「……接触者の魔法が、
意図せず変質することがある……?」
胸が、嫌な音を立てる。
⸻
そのとき。
背後から、ルカの声。
「……それ、読んだんだな」
ノアは、ゆっくり振り返る。
「……カイは……
魔法で殺されたんだよね……?」
ルカは、黙る。
それだけで、答えは出ていた。
⸻
「……教えて」
ノアの声は、震えていない。
ルカは、観念したように言う。
「……カイの死に使われた魔法、
術式が歪んでた」
「……本来なら、
即死しないレベルの呪文だ」
ノアの喉が、鳴る。
⸻
「……でも、
その魔法が“核”と共鳴した」
「……結果、
威力が数十倍に跳ね上がった」
ルカは、ノアを見る。
「……共鳴源は――
お前だ」
⸻
ノアの世界が、止まる。
「……え……」
「……お前の魔力が、
無意識に術式を増幅させた」
「……つまり……」
ルカは、静かに言う。
「……殺したのは、
犯人じゃない」
「……お前だ」
⸻
ノアは、笑った。
壊れたみたいに。
「……はは……」
「……やっぱり……」
その場に、崩れ落ちる。
⸻
回想。
雨の日。
カイが、前に立っていた。
「……ノア、下がれ!」
敵の魔法。
ノアの胸が、熱くなる。
光が、暴走する。
⸻
「……私……
守ろうとしただけなのに……」
床に、爪を立てる。
「……なんで……
私、生きてるの……」
涙が、止まらない。
⸻
ルカは、言う。
「……だから、
黄昏の徒はお前を欲しがってる」
「……お前の存在そのものが、
最強兵器だ」
⸻
ノアは、顔を上げる。
「……じゃあ……
私は……」
「……世界のために、
死んだ方がいいんだ……」
ルカが、即座に否定する。
「……違う」
⸻
「……お前は、
“選ばれた”んじゃない」
「……“生まれちゃっただけ”だ」
「……罪は、
お前にはない」
⸻
ノアは、震える声で言う。
「……でも……」
「……私が……
カイを……」
ルカは、歯を食いしばる。
「……それでも……
生きろ」
⸻
夜。
ノアは、一人で施設を抜け出す。
崖の上。
月明かり。
指輪を、外す。
「……私……
何も守れなかった……」
⸻
その瞬間。
背後から、声。
「……ノア……?」
振り返る。
そこにいたのは――
レイヴン。
⸻
ノアの顔から、血の気が引く。
「……来ちゃ……だめ……」
レイヴンは、駆け寄る。
「……生きてた……」
ノアの肩を、強く抱きしめる。
「……よかった……」
⸻
ノアは、泣きながら言う。
「……違う……」
「……私……
あなたに会っちゃ……だめなの……」
「……カイを殺したの……
私なの……」
⸻
レイヴンの動きが、止まる。
「……は……?」
「……私のせいで……」
「……私が……
あの魔法……」
震える声。
⸻
沈黙。
風の音。
⸻
レイヴンは、ゆっくりノアを離す。
「……それ、本当か……?」
「……うん……」
⸻
その瞬間。
レイヴンの目が、闇に沈む。
「……じゃあ……」
低い声。
「……お前が……
全部の元凶じゃねぇか……」
⸻
ノアの心が、砕ける。
「……ごめん……」
⸻
ラスト。
レイヴンは、背を向ける。
「……もう……
俺の前に現れるな」
ノアは、崩れ落ちる。
「……私は、
愛した人の命を奪って、
それでも生きている怪物だった。」
画面暗転。