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第4話、読みました。ノートの空白が象徴的で、心に刺さりましたね……。君が別の誰かと笑い合っている場面の描写があまりにリアルで、主人公の胸の痛みがじんわり伝わってきました。特に「冷えた溝」から「亀裂」への変化という表現、すごくしっくりきました。あの曇り空の比喩も、関係性の行き詰まりを如実に表していて美しかったです。続きが気になります!
第四章:曇り空の向こう側
夏休みを間近に控えた教室は、ジメジメとした湿気と、どこか浮ついたクラスメイトたちの喧騒に包まれていた。
だが、その空気の中心にいるはずの僕と君の間には、いつからか底知れぬほど冷え切った溝が横たわっている。話す機会が消えてからどのくらい経っただろう。同じ空間にいながら、僕たちが目を合わせることは、もう一日のうちで一度すらなくなっていた。
それだけなら、まだ耐えられたかもしれない。
問題は、僕たちの間に漂う空気の質が、ただの「距離」から「亀裂」へと決定的に変わり始めていたことだ。
あれは、夏休みまであと数日と迫った放課後のことだった。
掃除を終えて誰もいなくなった廊下を歩いていたとき、中庭に面した渡り廊下のあたりで、ふと見慣れた後ろ姿を見つけた。君だ。
しかし、その隣に立っていたのは僕ではない。隣のクラスで、いつもサッカー部の中心にいる、背が高くてよく喋る男子だった。
足がその場に張り付いたように動かなくなる。
木陰のベンチのあたりで、ふたりは何かを楽しそうに笑い合いながら話していた。僕の前ではいつも緊張したようにうつむき、言葉を選んでいたはずの君が、その男子の前では見たこともないほど柔らかく、無防備な笑顔を浮かべている。
手には、どこかで見覚えのあるような、表紙のノートのようなものを持ち、どちらからともなくそれを差し出し合ってじゃれ合っていた。
頭の芯が、冷たい水に突っ込まれたように一瞬で真っ白になった。
――まさか、違うよな。
胸の奥で、嫌な予感と焦燥感がどす黒い渦を巻いて膨れ上がる。
あのノートのやり取りも、放課後の教室で二人きりで過ごしたあの静かな時間も、もしかして僕だけが特別だと思い込んでいただけだったのだろうか。いや、それ以前に――あのノートの続きを今やり取りしている相手すら、もう僕ではなく、あの男子にすり替わってしまっているのではないか。
その日の夜、耐えきれなくなった僕は、自室の机の引き出しの奥から、あの使い古したノートを乱暴に引っ張り出した。
ページをめくってみる。最後に残した僕の言葉のあとには、相変わらず冷たい白紙の空白がぽっかりと口を開けて待っていた。
だけど、そこに重なるはずの君の体温や言葉は、もうどこを探しても見つからない。それどころか、その空白の向こう側で、君が別の誰かと新しい言葉を紡いでいる姿が脳裏にちらつき、胸が締め付けられるように痛んだ。
翌日、僕は意を決して、どうにか君に話しかけようと廊下で待ち構えた。
チャイムが鳴り、移動教室の列にまぎれて歩いてくる君の姿を見つけ、名前を呼ぼうと喉まで言葉が出かかった。
しかし、僕に気づいた君の瞳が、一瞬だけ揺らいだ。そのあとすぐに、困ったような、どこか気まずそうな――そして、僕を拒絶するような冷たい色を帯びたのだ。
君は何も言わず、わずかに目を逸らすと、そのまま僕の前を足早に通り過ぎていった。
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すぐ後ろを歩いていた別のクラスの女子たちと合流し、また楽しげな笑い声を響かせる。僕を置いて、君はどんどん遠くへ行ってしまう。
声をかける勇気は、その背中を見た瞬間に音を立てて砕け散った。
窓の外を見上げると、いつの間にか梅雨空のようなどんよりとした雲が広がり、校庭の緑を淀んだ灰色に染め上げていた。
僕たちの関係に忍び寄る不穏な影は、もう引き返すことのできない暗い雲行きとなり、夏の訪れを前にして、冷たく僕たちを包み込んでいた。