テラーノベル
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💛side
春が終わりに近づく頃には、教室の景色もすっかり馴染んでいた。
朝、教室へ入れば辰哉がいる。
昼になれば自然と隣で弁当を食べる。
放課後になれば、一緒に帰る。
誰かが決めたわけじゃない。
約束したわけでもない。
ただ、それが当たり前になっていた。
だから、もし辰哉が休んだら。
そんなことを考えたこともなかった。
💜「照、おはよ」
教室へ入ると、窓際から手が上がる。
💛「おはよ」
💜「今日眠い」
💛「毎日言ってる」
💜「今日は本当に眠い」
💛「昨日何時に寝た」
💜「二時」
💛「自業自得」
辰哉は机に突っ伏した。
💜「冷たい」
💛「優しくしたら調子乗るだろ」
💜「もう乗ってる」
💛「自覚あるんだ」
そのやり取りを見ていたクラスメイトが笑う。
「お前ら仲いいな」
その一言に、俺と辰哉は同時に顔を見合わせた。
💜「まあな」
辰哉が笑って答える。
俺も否定はしなかった。
“仲がいい”
その言葉が、思っていたより嬉しかった。
昼休み。
購買へ向かう廊下は人で溢れていた。
💜「パン買ってくる」
💛「また?」
💜「今日は焼きそばパンの日」
💛「曜日で決まってんの?」
💜「俺の中では」
そう言って人混みへ消えていく。
五分後。
戻ってきた辰哉の手には何もなかった。
💛「売り切れ?」
💜「負けた」
💛「何に」
💜「購買戦争」
肩を落とす姿が妙に面白くて、笑ってしまう。
💛「半分食う?」
弁当箱を少し押し出す。
辰哉は一瞬だけ目を丸くした。
💜「いいの?」
💛「その代わり、明日ジュース」
💜「安い取引だな」
嬉しそうに箸を受け取る。
その様子を見ているだけで、なぜかこっちまで満たされた。
こんな感覚は初めてだった。
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照は優しい。
でも、自分では気づいていない。
困っている人を見ると、何も言わず助ける。
重い荷物を持っている女子がいれば自然に持つし、消しゴムを落とせば拾う。
全部、当たり前みたいな顔でやる。
だから周りは照に頼る。
でも照は、そのことを特別だと思っていない。
そういうところが好きだった。
……好き?
頭の中でその言葉が浮かび、すぐに振り払う。
違う。
まだ違う。
親友だ。
それだけだ。
なのに。
照が他のやつと笑っているだけで、胸の奥が少しだけざわつく。
その理由だけは、まだ分からなかった。
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体育の時間。
グラウンドには初夏の風が吹いていた。
クラス対抗のリレー。
走るのは得意じゃない。
それでも順番が来れば走るしかない。
💜「照!」
スタート位置から辰哉の声が飛ぶ。
💜「転ぶなよ!」
💛「応援になってない」
笑いながら返す。
笛が鳴る。
走る。
風を切る音。
土を蹴る感覚。
ゴールした頃には息が上がっていた。
💜「お疲れ」
辰哉がスポーツドリンクを差し出す。
💛「俺の分?」
💜「一本多く買っちゃった」
そう言うけど、多分嘘だ。
一本多く買うような性格じゃない。
でも、その嘘は嫌いじゃなかった。
💛「ありがと」
冷たいペットボトルを受け取る。
汗ばんだ手に、その冷たさが心地よかった。
帰り道。
川沿いの道を歩く。
風が草を揺らし、水面がきらきら光っていた。
💜「もうすぐ夏だな」
💛「早いな」
💜「高校入って、あっという間」
💛「まだ二か月だけど」
💜「でも楽しい」
辰哉は川を眺めながら笑う。
💜「照がいるし」
その一言に、少しだけ鼓動が速くなる。
深い意味なんてない。
分かっている。
親友だから。
ただ、それだけ。
なのに。
どうしてこんなに嬉しいんだろう。
言葉一つで、一日の気分が変わる。
そんな相手がいるなんて、少し前までは想像もしなかった。
💜side
家へ帰っても、今日のことばかり思い出していた。
照が笑った顔。
照が「ありがと」って言った声。
スポーツドリンクを渡した時の少し驚いた表情。
そんな小さなことが、頭の中で何度も繰り返される。
スマホを開く。
照とのトーク画面。
何か送りたい。
でも用事がない。
少し悩んでから、結局一言だけ送った。
💜『今日ありがと』
既読はすぐについた。
💛『こちらこそ』
たった五文字。
それだけなのに。
自然と笑みがこぼれた。
この気持ちの名前を、まだ俺は知らない。
知らないままでいいと、その時は本気で思っていた。
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#二次創作
コメント
1件
あおいです〜!第3話、読み終えました。もうね、じんわりと胸が温かくなりました。特に「仲がいい」ってクラスメイトに言われたときの、ふたりの反応と照くんの「嬉しかった」って気づきがすごく良かったです。あと、スポーツドリンクを「一本多く買っちゃった」って可愛い嘘をつく辰哉くん…その嘘が嫌いじゃないって思う照くんの心の動きも、細やかで素敵でした。ふたりともまだ自分の気持ちに気づいてないけど、それがまた青春って感じで…続きがすごく気になります!