テラーノベル
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あれから数年‥‥
俺はまだこの親戚の家に住んでいた
だが、俺が高校に上がる頃
おばさんは子供を連れてこの家を出た
おじさんの暴力と酒癖に辟易していたからだ
しかしそれも今に始まった事ではなかった
俺がこの家に来た時にはすでに終わっていたからだ
俺だってこの家に来ていなかったら普通の学生生活を送っていただろう
俺の両親は冬のある夜
雪道にハンドルを取られて事故を起こし、俺を残して亡くなった
遠い親戚だったこの家は俺にとってありがたい場所だった
例え優しくしてもらえなくても‥‥
帰る場所があるだけでありがたかった
だが状況が一変する
叔父と2人の生活が始まり数ヶ月
俺は空気の様に存在感を消して過ごしていた
そんなある夜
眠りの浅い俺は、ふと気配を感じて目を覚ます
そこには叔父が立っていて俺を見下ろしていた
「‥‥‥‥叔父さん?どうかした‥‥?」
また酒でも買ってこいって言うんだろう
そう思っていたのに、叔父は起き上がる俺の肩を掴みベッドに押し戻した
「痛っ‥‥‥おじさ‥‥‥‥」
「お前、俺に嘘ついてんな‥‥」
「え?何の‥‥」
「ロウが悪いんだ‥‥」
「な、やめっ‥‥」
何のことを言っているんだ?
酔っ払いの戯言だろう
そう思っていると叔父が俺の首筋に顔を埋めた
「ちょ!何して‥‥」
「こんなの‥‥俺のせいじゃない」
「おじさん!何言って‥‥離して!」
きっと酒の飲み過ぎで頭がおかしくなってるんだろう
俺は酔っ払いを押し除け、部屋の外に出した
大声で扉を叩く叔父を無視して急いで鍵を閉める
もう嫌だ
こんな家出て行ってやる
自分を守れるのは自分しかいない
バックを取り出し家を出る準備をする
俺の荷物なんて何もない
棚から服を取り、カバンに詰め込む
本棚から封筒に入れてあるお金も一緒に詰め込んだ
バイトして叔父に渡していたお金を少しづつ取り分けて貯めていた
いつか出て行く為に‥‥
こんなに早く出て行くとは思わなかったからいくらも貯めれた訳ではないが、無いよりはマシだ
ドアの向こうで騒いでいた叔父も諦めたのか静かになっていた
まだだ
もう少し‥‥
眠りにつけばこっちのもんだ
俺は棚の奥に閉まってあった手袋を取り出し、最後に詰め込んだ
俺の唯一の宝物
静まり返った家の中
息を殺して歩く
ゆっくりと家の扉を締め、一気にアスファルトを駆け出した
その瞬間から手にした自由
そしてその自由と手を繋いでる不安と共にこの街を出た
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コメント
2件
うわぁ~セツナ 普通に叔父許さんけどねw こや 頑張って欲しい...!