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夕暮れの公園、 五人は、木の下に並んで座っていた。 誰も、すぐには帰ろうとしなかった。 見つけた写真も 古い箱も。 全部、五人の真ん中に置いてある。
「……なあ」
勇斗が口を開いた。
「最後の願いって、何にする?」
仁人が顔を上げる。
「……分からない」
「俺も」
柔太朗が空を見上げる。
「ずっと『五人でいたい』って願ってきたけど」
「それだけじゃ、足りないんかな」
太智が呟く。
「何度願っても、誰かが離れてもうた」
「せやな」
舜太が頷く。
「『ずっと一緒』って願うだけじゃ、何も変わらんかったんかもしれへん」
仁人は黙っていた。 ずっと 五人でいたかった。 でも その願いがあるからこそ、 別れが怖くなった。 失うことが怖くなった。 そして 自分から離れることを選んだ。
「……俺、分かったかもしれない」
「何?」
四人が仁人を見る。
「俺たちが願うべきなのは」
仁人は写真を見つめる。
「『ずっと一緒にいること』じゃないんじゃないかな」
「じゃあ?」
「……たとえ離れても」
少しだけ声が震える。
「また、自分たちで会いに行くこと」
四人は黙って聞いている。
「離れることを怖がらないで」
仁人は続けた。
「誰かが一人で消えようとしないで」
「もし離れても、また会えばいい」
「何度忘れても、また思い出せばいい」
仁人は四人を見る。
「そういう願いなら……」
涙を浮かべながら笑う。
「きっと、もう誰も一人にならない」
勇斗が笑った。
「それ、いいな」
「うん」
柔太朗も頷く。
「俺も、それがいい」
「俺もや」
太智が笑う。
「舜太は?」
「決まっとるやろ」
舜太が笑う。
「五人で決めたんやから、五人で願おうや」
*
その夜、 五人はもう一度、公園に集まった。 空には星が出ている。 小さな木の下、 最初の人生で五人が出会った場所。 そして 何度生まれ変わっても戻ってきた場所。 勇斗が手を差し出す。
「じゃあ」
五人が手を重ねる。
「せーので言おう」
「うん」
仁人は目を閉じた。 これまでの人生が 頭の中を駆け抜けていく。 五人で笑った日。 喧嘩した日。 離れた日。 再会した日。 何度も 何度も。 同じことを繰り返してきた。 そして 前世の最後。 自分が一人で願った言葉。
――『来世では、もう会いませんように』
仁人は、その言葉を思い出す。 でも もう怖くなかった。
目を開ける、 四人がいる。
「せーの」
五人の声が重なる。
「――何度離れても、また会えますように」
その瞬間 風が吹いた。 木の葉が一斉に揺れる。 仁人の胸が、突然熱くなる。
「……っ」
頭の中に 今まで見たことのない景色が浮かんだ。
最初の人生、 五人が初めて出会った日。 その帰り道 五人で手を繋いで歩いている。
『また明日ね』
『うん!』
笑い声。 その中で 仁人が振り返る。
『ねえ』
四人を見る。
『もし、明日会えなかったら?』
勇斗が笑う。
『じゃあ、明後日会えばいいじゃん』
『明後日も会えなかったら?』
『その次』
舜太が笑う。
『それでも会えへんかったら?』
太智が答える。
『会えるまで探したらええやん』
柔太朗が頷く。
『絶対見つけるよ』
仁人は笑う。
『……じゃあ、約束ね』
五人の小指が重なる。 ――それが 最初の約束だった。
*
「……思い出した」
仁人が呟く。
「何を?」
勇斗が聞く。
「俺たちが最初にした約束」
「なんて?」
仁人は笑った。
「会えるまで、探す」
四人も 少しずつ思い出していく。
「……だから俺たち」
勇斗が呟く。
「何度生まれ変わっても、会えたんだ」
「うん」
仁人が頷く。
「俺が『会いたくない』って願っても」
四人を見る。
「みんなが、探してくれたから」
舜太が笑う。
「当たり前やろ」
「五人やもん」
太智が続ける。
「一人だけ逃げても、残り四人で探しに行くで」
仁人は泣きながら笑った。
「……ありがとう」
五人はしばらく 何も言わずに座っていた。 すると 仁人の手の中にあった古い写真が風 に飛ばされた。
「あっ」
勇斗が追いかける。 写真は 木の根元に落ちた。 裏返す、 そこには 今まで見たことのない文字があった。 ――『願いは、もう叶った。』
「……え?」
五人が顔を見合わせる。 そして その下に もう一行、 ――『あとは、今世を最後まで生きて。』
仁人は息を呑んだ。
「……最後まで?」
勇斗が写真を見つめる。 その言葉の意味を 五人はまだ知らない。 ただ これまでの輪廻とは違う何かが、 もう始まっていた。
コメント
1件
読了しました……この第24話、本当に美しい回でしたね。仁人が「ずっと一緒にいること」じゃなく「たとえ離れても自分たちで会いに行くこと」を願いとして見つけ直すシーン、胸を打ちました。今まさに連載中ということでこのラストの「今世を最後まで生きて」がどう響くのか、続きが気になります。五人で手を重ねる描写に、長い輪廻の重みと温かさが詰まっていて、じんわり涙が出ました。笑う門には福来るさんの描く絆の描き方が本当に繊細で素敵です。