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完全に一目惚れだった。ある日のバイトの帰り道に彼女を見た瞬間鼓動が高鳴って、目が離せなくなった。
街灯が辺りを照らす道。彼女の後ろを静かに歩く。 偶然方向が同じだった…ように見えて俺の家はさっきの角で反対方面だ。普段は少しだけ彼女を目に止めてから帰宅するだけだったが、今日は興味本位で彼女の後をついてきてしまった。
(家、ここなんすね…)
なんかこれってストーカーみたいだけど…大丈夫っすかね。 気がつくと俺は彼女のことを毎日追っていた。一目惚れなんて馬鹿馬鹿しいかもしれないが、本当に最近は彼女のことしか考えられない。GPSも付けようかと思ったが無防備すぎるあまりに躊躇ってしまった。そのくらい彼女は隙が多いのだ。毎日ついてきてる俺にも気づかないくらいだし。
ーー
今日も彼女の後ろをつけて遠回りする夕暮れ時。雨が降っていていい天気とは言えない日だった。
今日こそ話しかけてみる…!俺は覚悟を決めて行動に移した。この大雨を利用して。わざと、差していた傘をその場に置いていき、雨に打たれながら彼女へ声をかけた。策士すぎるかもしれないが俺にはこれが精一杯だった。
「お姉さん……」
緊張故少し掠れた声で声を掛けた。こんな時間に男に声を掛けられたら無視されるんじゃないか、と不安が頭をよぎったが、彼女は優しく返してくれた。返事と共に、こんな俺を少しでも心配の眼差しで見てくれたことが嬉しかった。
何も持たず雨に打たれている俺に気がついた彼女 は俺にそっと自分の傘をかざそうとしてくれた。が、
この状況に緊張している俺は何故か彼女の差す傘の下に身体を寄せた。なにしてんだ…と自分でも慌てたが、彼女も特に嫌がる素振りは見せなかったので、内心ほっとした。
「私の家…すぐだけど、来る?」
……え、え!? いいんすか……?
こんな出会ったばっかの男を家に招いても大丈夫なの??でも、行きたい。こんなチャンスを逃す訳には…
俺の頭は複雑な感情でいっぱいになった。しかし、興味心が勝ったのだろう。俺は元気よく頷きながら返事をしてしまった。嬉しい気持ちとなんで俺なんかを…?という疑問が入り交じりながらも俺らは2人雨の下歩き出した。
お姉さん…ちょっと不安そうな顔してるけど、どうしたんすかね…。やっぱ俺の事誘ったの後悔してるんかな。なんだかやるせない気持ちになった俺は気づけば彼女の買い物袋を代わりに持っていた。偶然ながら軽く触れた手の感触にさえも心が高鳴ってしまった。
その後は彼女との雰囲気も柔らかくなり、気軽に話しながら夜道を歩いた 。名前を聞かれ、思わず心音が早くなる。まさか彼女からの問が来るとは…ただ少しでも俺に興味を持ってくれたことが嬉しくて。彼女にはっきり聞こえる声で名前を教えた。俺の名前を忘れることのないように、
見慣れた彼女の家に着くと俺は好奇心を抑えきれず先に中に入ってしまった。いつも見ていただけで中は分からなかったから、気になって仕方がなかった。
「おじゃましまーす!」