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ドアを押すと、カランっと可愛らしい音が響いた
「いらっしゃいませ」
作り笑顔を貼り付けた店員さんが、軽く会釈をした
店内はクリスマスの飾りがされていて、小さなツリーや少し質素なイルミネーションがあった
外も店内も明るいので、そのライトをつける意味はあるのかと疑問に思う
「僕はあっちを見ているよ」
類は『クリスマス』と書かれたポップを指さして言った
「わたしも一緒に見るよ。別に買いたいものもないし」
そう言って、クリスマスコーナーの方へ歩いて行った
わたしの方が先に歩き出したはずなのに、類の大きな一歩は、わたしの小さな歩幅にすぐに追いついた
林檎程度の大きさの赤色のオーナメントを手に取り、類に見せる
「これとか、いいんじゃない?」
「うーん、もう一回りほど大きいのがいいね。ステージのツリーは大きいから」
「じゃあこれ?」
もう一回り大きなオーナメントを指差す
「あぁ、これがいいよ。あと十数個欲しいから、店員さんに在庫を聞いてこようか」
レジの方に足を運ぶと、幸い他のお客さんはいなかった
「すみません、オーナメントの在庫を…」
類の話を遮り、店員は口を開いた
「あれっ、神代先輩に、草薙さん!」
「え?」
ゆるくウェーブのかかった黒髪には、クリスマスイメージなのか星の飾りが散りばめられている
琥珀をそのまま入れたような、綺麗な吊り目の女性
多分、同い年くらい
わたしのことを知っているような口ぶりだから、知り合いのはず
しまった。今日は誰にも会わないと思って類と両親のことしか覚えていない
焦りを覚えながら、一応、知ったような口を聞いておこう
「あ、あー!偶然だね。ここでバイトしてるの?」
「うん!ま、一週間の短期バイトだけどね。人手不足だからって」
よかった、間違ったことは言っていないみたいだ
「フフ、本当に偶然だね白石くん。ところで、オーナメントの1番大きいサイズの在庫ってあるかい?」
シライシ
彼女はシライシさんというらしい
彼女は下の名前で呼ぶほどの仲なのだろうか?
それとも、苗字さん?あだ名?もしかしてショーのユニット仲間だったりするのだろうか
何か間違ったことを言うと厄介なので、なるべく名前は言わないようにしておこう
「あー…あったかな?ちょっと待っててください!確認してきますね」
そう言ってシライシさんは裏の方へ行ってしまった
「フフ、驚いたね。まさか白石くんに会うとは」
「そうだね。びっくりしちゃった」
「おまたせー!ありました!幾つ必要ですか?」
大きな段ボールを抱えた彼女はわたしたちにそう聞いた
「10個ほど貰えるかい?」
「はーい!このまま会計しますか?それもともまだ何か見ます?」
「あぁ、見させてもらうよ。すまないけど、そこに置いておいてくれるかな」
「わかりました。ごゆっくり〜」
笑顔で手を振ってくれた彼女に、小さく手を振りかえした
「何見るの?まだなんかあったっけ?」
わたしの記憶では、足りないのはオーナメントだけだったはず
「あぁ、ショーには関係のないものだよ。…あった」
類は親指の爪程度の大きさの、緑と紫のオーナメントを手に取り、足早にレジへ向かった
会計が終わったようで、こちらに小走りで向かってくる
袋から先ほどの緑のオーナメントを取り出した
「フフ、いいだろう?お揃いにしないかい?」
類は緑色のオーナメントをわたしに差し出した
「プレゼントだよ。クリスマスには少し早いけどね」
「プレゼント…お揃い…」
「おや、嫌だったかい?」
「ううん」
首を振って、オーナメントを受け取る
「嬉しい。ありがとう」
わたしはそれをスマホにつけて、類と一緒にお店を後にした