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あ、未遂かー(ちょっと残念そうなまきぴよですの
約束の日がやって来た。
🖤「お邪魔します」
💚「俺まで一緒に、ありがとうございます」
件の人の大きな自宅。
にこやかに俺たちを迎え入れ、リビングに通された。
馴染みの店のケータリングサービスだと言い、料理を作る人、ドリンクを作る人がわざわざ家に来ていた。
食前酒で乾杯。
打ち合わせ通りに、3つ並んだグラスの真ん中を阿部ちゃんに渡す。
阿部ちゃんは1つだけ強いお酒で作られた真ん中のグラスを一気に飲み干すと、さすがに違和感があったのだろう、一瞬思慮したが先輩の前だからか黙っていた。
それからも阿部ちゃんだけ度数の高いお酒が用意され、見た目は俺たちも同じものを飲んでいるように見せてほぼノンアル。
緊張しているのでしばらくは持ち堪えていたが、そのうち酔いに勝てなくなってきた。
💚「めめ……」
🖤「…どうした?」
💚「ちょっと、回ってるかも」
『あぁ大丈夫?辛そうだしタクシー呼ぼうか。目黒悪いけどタクシー手配してくれる?』
心臓が大きく鳴った。
『タクシー呼べ』が合図だ。
ここで俺はタクシーの手配をするついでにトイレを借りる名目でリビングを出る。
2人きりになって前後不覚に陥った阿部ちゃんは先輩に抱かれる。
🖤「…はい」
スマホを手に立ち上がる。
阿部ちゃんは隣に座った先輩に支えられて水を飲んでいるけど、もう先輩に身体を預けきってしまうほど力が入っていない。
『ここ、横になっていいから』
💚「すみません…」
『いいよ。ちょっと服緩めような』
シャツのボタンに手がかけられ、肌が少しずつ露わになる。ベルトも外される。
もう無抵抗だ。
先輩はまだ立ち尽くしたままの俺をちらっと見て視線で早く出ろと催促した。
でも、本当に俺が部屋を出たら。
ここまでもってきてしまった時点で既に許される事ではない、それでも逆らえない人だからと思ってきたけど、本当にこんなふうに大切な人を他の人の手に渡していいのか?
『汗かいてるな、男ばっかだからいいよ、脱ぎな』
されるがまま返事をしない阿部ちゃんは、ついに眠ってしまったようだ。
先輩の視線に苛立ちが見え始める。
『目黒、まだ?』
🖤「……」
『おい目黒』
俺は先輩に近づくと、阿部ちゃんのシャツを脱がせていた手を掴んだ。
🖤「だめです」
『は?』
🖤「やっぱり無理です、させられません」
『目黒』
乱れた服を軽く直して抱き上げる。
🖤「帰ります」
『お前、意味わかってんだろうな』
🖤「はい」
俺は先輩を真っ直ぐ見た。内心怯んでいたけど、それを見せたら絶対に押し切られる。
『もういい。好きにしろ』
🖤「…すみませんでした」
帰りのタクシーで泥酔した阿部ちゃんを抱きしめながら、自分がしようとした事、そしてこれからグループに降りかかるであろう大きな影響にひたすら泣いた。