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第28話:師匠の真実
鏡の世界の広場。
上下逆さに重なる都市の残像は、まるで水面に映る影のように揺れていた。
守られなかった命たちの影が無言で歩き続け、その間にクオンと“もう一人のクオン”が対峙していた。
灰色の外套を纏った自分自身。
だがその髪は伸び、疲れ切った表情には深い皺が刻まれている。
その灰色の瞳は、まるで全てを諦めた者のものだった。
「……お前は師匠を探しているな。」
鏡のクオンが低く呟いた。
クオンは灰色の瞳を細める。
「そうだ。師匠は、俺に初めて暗黒物質の揺らぎを見せ、命を守る正義を教えてくれた存在だ。
だが、なぜ消えたのか……それがまだわからない。」
すると鏡の街の奥、影の群れをかき分けるように、一つの姿が浮かび上がった。
緑のロングコートを纏い、黒髪を後ろで結んだ女性。
額の第三の眼は淡く光り、紫がかった瞳は静けさと強さを宿している。
──師匠、ライラ。
ユリクは驚きに紫の瞳を見開き、声を失った。
「……生きて……いるのか?」
だがライラの姿は、淡く揺らぎ始めていた。
まるで残像。記録に刻まれた最後の瞬間。
「私は“秩序の修正”に逆らった。
管理できない未来を口にしたとき……国家は私を抹消した。」
クオンの表情が硬直する。
「抹消……つまり、存在ごと消されたのか。」
ライラは微笑みを浮かべる。
「だが完全には消えなかった。鏡の世界に“残った”のよ。
ここは、守られなかった命と、消された未来が行き着く場所だから。」
鏡のクオンが続ける。
「お前が追ってきた答えはこれだ。
師匠は、秩序の正義に消され、鏡に囚われた。」
クオンは拳を握り、額の第三の眼を強く光らせた。
灰色の瞳には揺るぎない決意が宿っていた。
「……なら、俺は師匠を取り戻す。
抹消されたとしても、命を守る正義を貫くために。」
ライラの残像が淡く揺れ、微笑みを浮かべた。
「その選択は、必ず世界を揺るがす……」
都市の外では、国家のホログラムが宣言を続けていた。
「クオンは完全抹消対象。存在を消去せよ。」
だが鏡の中で、クオンは師匠の真実を掴んでいた。
それは、未来を選び直すための最大の鍵だった。