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第29話:選択の裂け目
鏡の世界の裂け目を背に、クオンは灰色の外套を揺らしながら立っていた。
額の第三の眼は強く光り、その輝きは周囲の影をも震わせていた。
灰色の瞳は冷静さを保ちながらも、心の奥底では激しい葛藤が渦巻いていた。
師匠ライラの残像が前に立っている。
緑のコートを纏い、黒髪を後ろで結んだその姿は淡く透け、紫がかった瞳が穏やかにクオンを見つめていた。
「クオン……命を守る正義を貫けば、秩序は崩れる。
だが秩序に従えば、命はまた消されていく。」
隣でユリクが紫の瞳を見開き、苦しげに声を上げる。
赤茶の髪をかき乱しながら、墨染めのコートを握りしめていた。
「どちらに転んでも犠牲は出る。俺はフォージャーとして“命を造る”道を選んできたが……
お前の選択は、俺の未来すら変えるかもしれない。」
さらに影の中から現れたのはラディウス。
灰色の髪を刈り上げ、緑の瞳を冷たく輝かせている。
濃墨のマントを翻し、国家管理職の象徴として堂々と立ち塞がった。
「クオン、最後の機会だ。秩序に従え。
未来は上書きされ、過去は修正される。それこそが人類の進化の答えだ。」
広場に集まった守られなかった命たちの影が、静かにクオンを見つめていた。
幼い子どもも、老人も、兵士も、市民も。
その水色の瞳、灰色の瞳、紫の瞳──さまざまな色が訴えていた。
「私たちは生きたかった」
「消されるために生まれたんじゃない」
群衆のざわめきのような声が、クオンの耳に重く響く。
リサの姿も現れた。
黒髪を束ね、琥珀色の瞳を真剣に輝かせ、茶色のコートの裾を揺らしていた。
「クオン、あんたは命を守りたいんでしょ? なら迷わないで!」
トーマが苦い顔をし、緑の作業服の腕を組んだ。
「だが秩序を壊せば、都市が持たない……!」
ミナは三つ編みを握り、水色の瞳を震わせて叫んだ。
「でも、命を守るのは正しいよ!」
クオンは目を閉じ、深く息を吐いた。
「命を守る正義」か、「社会秩序に従う」か。
二つの選択は、未来そのものを決定づける分岐点だった。
第三の眼が強烈な光を放つ。
裂け目の向こうにある鏡の世界が震え、現実の都市にまでその揺らぎが波及していく。
クオンは静かに目を開け、灰色の瞳を燃やした。
「俺は……」
その言葉が発せられる瞬間、都市の秩序と鏡の残像が重なり、世界全体が大きく軋んだ。
ふわねこカラメル