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「俺マジで嫌なんだけど…。暴発したらどうすんだよ」
支給された拳銃を手に、高地は顔をしかめる。事件柄、上層部から携帯許可が下りたのだ。
「じゃあなんでそもそも刑事になったんだよ」
大我が突っ込んだ。
「白バイがよかったんだけど、そう思う奴がほかにも大量にいたから譲ってやっただけ」
「なるほど、あぶれたのか」
北斗が言って、「言い換えるなよ!」と眉尻を下げた。
「まあでも刑事になれたのもすごいじゃないですか」
慎太郎がなだめて、場の雰囲気が和む。
その隣で、何やらぶつぶつとつぶやいている捜査官。
「やっぱグロッグが使い慣れてるからな…。リボルバーはわかんない」
「まあまあ、ここはFBIじゃなくて日本警察なんだから。しょうがない」
樹がジェシーの肩をたたく。
そして各々懐などにしまった。
「じゃあ俺は被害者に会ってくる。…誰かついてくるか?」
大我がくるっと振り返って見てみれば、慎太郎とジェシーが手を挙げていた。
「どうしよっかな…」
手のひらの先を慎太郎に向けた。「森本。行こう」
残念そうな顔のジェシーと面倒くさそうな3人を残し、主任と巡査長は出て行った。
「港原亮司さんですね。警視庁捜査一課の京本です」
ベッドの上の男性に声を掛けると、男性は恐々というようにうなずいた。
「森本です」と慎太郎も続く。
「怪我の具合はどうです?」
港原の右腕には包帯が巻かれていた。八尾川に突き飛ばされた際に骨折したという。
「ええ、まあ」
困った表情で答える。「あの…俺も逮捕されるんすか? あいつは逃げてるし、今までの事件だって探されてるだろうし…」
「証拠が積み重ねられれば、いつでも逮捕できますよ」
大我にそう冷ややかに言った。さらに怯えの強くなった顔をしている港原に、ふいに唇の端を緩めて訊く。
「加害者に襲われたときの様子はどうでしたか」
「…『お前のせいでサツに追われてんだよ』って言って来ました。まああのことかなって予想はついたんすけど…」
「都内の特殊詐欺事件ですね」
慎太郎が確認する。
「はい。俺、サツに職質されたときについ情報を漏らして…」
「じゃあ、加害者の逃走先に心当たりは?」
港原は首を振った。「わからないっす」
今度は慎太郎が訊いた。
「では、狩崎組の事務所の場所は」
「……言えないっす」
それを聞き、大我の目の色が変わった。
「お前が加担した違法薬物の密輸、四課に詰めさせてもいいんだな?」
ひっと小さく声が聞こえた。
その後、港原は暴力団事務所の場所を吐いた。 2人はうなずき合い、病院を後にした。
「……すげえ怖かったです、主任」
捜査車両に戻ると、しばらく無言だった慎太郎が口を開く。
「被害者が?」
「……いえ、京本主任が」
大我は何度か瞬きしたあと、そうか、と苦笑する。
「いや、この仕事やってるとまあそういう性格になっちゃうんだよね。でもみんなのほうがもっと怖いよ、樹とか」
確かに、と心の中で思う。
「知ってる? 樹ってマル暴だったらしいよ。なんで一課に来たのかは知らないけど」
「え、そうなんですか」
ふと慎太郎は、今回の件で樹が見せた表情を思い出す。いつもの強気なものとは打って変わった、怯えたような顔だった。四課出身なら慣れているはずなのに、なぜだろう。
「ま、気になるなら訊いてみれば。あいつは答えなさそうだけど」
慎太郎は大我を見やる。真顔で前を見据えたまま、
「…しゃっ、アジト潜入といきますか」
ふいに瞳にぎらりと妖しい光が灯った。
続く