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何も知らない私はその日も商売にいそしんでいた。
「エシャロット、じゃあ卵焼き売りに行きましょうか。」
ゼルゼディス様が言うが、私には一案があった。
「でも、ゼルゼディス様。
いつも同じ野菜の卵焼きだと飽きられてしまいますわ。」
「でも、野菜しか私たちには…」
ゼルゼディス様が言う。
「ゼルゼディス様!
河原に行きましょう!」
「は?
水遊びでもするんですか?」
「この下りで水遊びなんてするわけ無いでしょう!
野草を採りに行くんですわ!」
私は言った。
私たちは大きなカゴを背負って、領地のセイラ川に向かった。
「まぁ、美味しそう!」
「え、草がですか…?」
ゼルゼディス様は私に訝しげな視線を送る。
「ほら、つくしと菜の花が生えていますわ。
立派な食料になりますのよ。」
私は言い、カゴを下ろした。
「えぇ…
つくしって草ですよ…
菜の花は飾るものでしょう…?」
どうも、この世界ではつくしと菜の花を食べる習慣は無いようだ。
私はゼルゼディス様をほったらかして、つくしと菜の花をカゴに入れる。
「あなたって…たくましいんですね…」
「あのね、強くなくちゃ生きていけないんですよ。
ゼルゼディス様はお人好し過ぎますわ。」
「…そうでも無いですよ。」
ゼルゼディス様は寂しそうに笑った。
何か悪い事を言っただろうか…?
保護猫カフェに全額寄付するなんて、お人好しと言えそうだが…
その時の私は何も知らなかったのだ。
そうして、1時間ほどつくしと菜の花を取り、屋敷に戻って下処理を2人でした。
すっかり貧乏が板についてきたなと思う。
「そう言えば、アリアが訪ねて来てましたけど、何の用でしたの?」
「えーと…
それはちょっと言えないんです。
アリアさんのプライバシーもありますし。」
「すごく暗い顔で帰っていたけど…」
私は言う。
「心配ですか?」
ゼルゼディス様はつくしのはかまをとりながら尋ねた。
「うーん…
心配…と言いたい所だけど、たまには良いお灸だわ。
でもね、感謝もしてますのよ、アリアに。」
私は少し照れて言った。
「感謝?
あのアリアさんにですか?」
ゼルゼディス様が言う。
「その、私とゼルゼディス様を引き合わせてくれたのはアリアなのですから…」
自然と言いたかったのに、私の顔は熱くなっていた。
きっと真っ赤なのだろう。
「エシャロット…
私はあなたが思うようなお人好しでは無いんです。
それでもずっと側に居てくれます…よね?」
「え、えぇ…
???」
訳が分からないままそう答えた。
ゼルゼディス様は悲しそうに微笑んだ。