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〜東雲遥斗side〜
「いよいよ三者面談かぁ。」
委員会が終わり、先生が退室したところで、神桜さんがため息を付いた。
「なんだよ、お前乗り気じゃねえの。」
「だって柊先生学年主任だから、面談してくれないじゃん。担任が柊先生だったらよかったのに。」
「はっ、せいぜいほざいてろ。本当に好きなら俺みたいに、裏で小細工してでも担任にしてみろよ。」
「私は先生と対面で話せるだけで嬉しいな。私のことをよく知ってくれてる人から、客観的な意見を聞けるなんて最高だし。」
「如月、”人間推し”になってからもっとキモくなったよな。なんか、全肯定の盲目オタク感が増したっていうか。」
「あたしからすれば、颯真の厄介オタクムーブのほうが見ててキツイけど。」
楽しそうに話す三人を横目に、書類を整理してそそくさと帰る準備をする。
今日は六時から塾があるので、早めに帰らなければならないのだ。
三つの塾を掛け持ちし、オフの日も勉強に明け暮れる僕は、放課後が空いていることなんてほとんどない。
三人ともそれを分かってくれているので、雑談に入ろうとしない僕に声をかけたりはしない。
「じゃあ、僕先帰るね。」
「はーい!じゃーねー!」
「塾、頑張ってね。」
「また明日な。」
十時、家の扉を開ける。
「ただいま。」
小さく呟きながらリビングに入ると、パソコンと向き合う母さんがいた。
手元には、期末テストの問題用紙と僕の解答があった。
「……帰ったの。」
「うん。」
きっと、僕の苦手の対策問題を作ってくれているのだろう。
今週返却されたテストの点数は、僕にしてはまあまあな出来だった。
ただ、母さんはそれじゃ満足しない。
だから褒めてもらおうなんて思わないし、自分から話題にしないほうが吉だ。
「お風呂入ったら、もう部屋行くね。」
「……。」
深夜の勉強はなかなか頭に入らない。
無闇に長時間勉強するよりも、休み休み勉強するほうが頭に入るという話はどこかで聞いた気がした。
でも、母さんの勉強プランは間違っていない。
そう信じて、ただひたすらに勉強するのみだ。
「そういえば、来週三者面談か……。」
最近、母さんと正面から話すことなんてほとんどなかった。
そんな時間をつくるくらいなら、勉強をしたほうが母さんも喜ぶだろうから。
(僕は母さんにこんなに期待してもらってるんだ。ちゃんと応えないと。)
そんな無駄な考え事をしていたからか、解いた問題の三分の一くらいが間違いだった。