コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
視線を向けた庭先で、ふわりとブロンドの髪が揺れた。
庭先にはたくさんのテーブルが並び、たくさんの客人が思い思いに談笑していた。
ブロンドの髪を揺らして笑う彼女の白磁の頬には、うっすらと朱がさしていて、まるでオルゴールの天使の人形のようだった。
その白いワンピースは、彼女のためだけに織られた羽衣だった。
羽衣が揺れ、天使がゆっくりと振り向いた。
―思わず息を呑んだ。
パーティーの喧騒が遠ざかり、耳鳴りが鼓膜を震わせる。
ついには、心臓の音だけが私を支配した。全てがスローモーションになっていく。
桃色の唇にそっと添えられる手。
大きく愛らしい瞳が、細められ、まばゆい笑顔を作り上げる。
ドクンと一つ、大きく心臓が跳ねた。
彼女の視線がゆっくり、私の心を捕らえていく。
時が止まっていく。
彼女のブロンドが揺れ、その愛らしい顔がブロンドの波に消えていく。
彼女は微笑みだけを残して、ゆっくりと背を向けた。
私の呼吸は止まっていた。
それなのに息苦しさも感じなかった。
―私の心は天使に奪われた。
天使は、光の中と消えていった。
―行かないで。待って。
追いかけようと、一歩を踏み出すと、強く腕を引かれた。
「アン、大丈夫?」
振り向くと、叔母の心配そうな顔があった。
止まった時間がひび割れていく。
急いで視線を戻したけれど、お庭にもう天使の姿はなかった。
時は再び動き始めた。
給仕をしながら探したけれど、見つけられず
ーーもう会うことはないのだろう。
私はそっと肩を落とした。
白いワンピースを揺らして私を見ている。
桃色の唇が三日月を描き、キャラメル色の瞳がゆっくりとまばたきをする。
背中の羽が静かに広がっていき、彼女は私に手を差し出す。
私はその白磁の手に手を伸ばす。
触れる瞬間、眩い閃光が走り ――私は目を覚ました。
―あの翼に抱かれたら、どんなに幸せだろう。