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65 ◇どうして、旅行に誘ってくれたのですか?
部屋に戻ると、蒼馬さんはすでに部屋に戻っていた。
「ただいま~」
「おっ、先にチビチビやってる。
酎ハイ、君もどうだい?」
「少しだけ、いただきます」
❀また景観の見える椅子に腰かけ、ふたり外の景色を眺めながら
お酒をいただく。
温まった心地よさも手伝って、私はますます気分がよくなっていった。
それで、気がつくと本当はずっと聞きたかった質問が口から零れ落ちていた。
「どうして、私を旅行に誘ってくれたのですか?」
「どうしてだろうね。
あまり深く考えてなかったからごめん、ちゃんとこたえられない」
『あまり深く考えていなかったから』
これを聞けただけで、あ~、彼の真意が分かったような気がした。
彼の私に対するスタンスは、ちっとも今までと変わってないっていうことが。
『妻とは別れて、私と本気で付き合いたい』ってことではないと、はっきりと
告げられたようなものだ。
そうだよね、そうなら旅行を誘う前に……もうとっくの昔にそう言ってるよね。
彼の返事を聞き、すぐに問い掛けたことを後悔した。
くだらないことを訊いたものだと……。
「そうですか。直近でお金でも入ったのかと思いました」
私は、自分の意図を見透かされそうなのが怖くて、どうでもいいような
感想を取ってつけてみた。
「いやぁ~、そんなこともないね。残念ながら」
そうぼそっと呟きながら、彼は焼酎の最後の一滴を飲み干した。
「そろそろ、寝ようか」
「あぁ、はい」
頭の片隅で『こんなことしていたら、婚活でまた痛い目みるかもしれないのに、
私ったら何やっているのだろう』そんな想いが浮かんだ。
私はこれを払拭するように頭を振った。
そして、彼のあとに続き、隣の部屋へと足を向けた。