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私
にとってのそれは……
『死』だ。
生者は死者の国へ旅立ち、死者は黄泉の国へと旅立つ。
生者が生きるこの世は『現世』であり、『あの世』こそが『常夜ノ国』なのだ。
「死んだら皆一緒になれるね」なんて言葉があるけれど、そんなの嘘っぱちだよ。
生きている人間だけが救われて、死んでしまった者達には救いがない。
天国とか地獄とか輪廻転生とか信じるタイプですか? 信じてなかったけど、あれって本当だったんですね! 魂はあると思いますか? あって欲しいと思うけど、あったら面倒くさそうだよね。
死んだ後に生まれ変わることを信じている人いますか? いるよー、僕は死んでも生まれ変わらないつもりだけど。
この世は苦しみだと思ってる? そう思う時もあるかなぁ。
今、幸せを感じていますか? うん、幸せだよ。
どんな時に幸せを感じる? 君と一緒にいるとき。
幸せだと思う瞬間を教えてください。
あー、えっと、特にないです。
幸せだと感じる時はありますか? はい。
好きな人と手を繋いだり抱きしめ合ったりキスをしたりしたい! 憧れのあの人と結婚したいなぁ~♡ ずっと一緒にいたいし離ればなれになりたくないよぉ!! 夢だったお仕事に就きたいしお金も欲しいけど…….やっぱり素敵な恋がしてみたい!!! 愛しい恋人がいたら毎日幸せだし頑張れるよね☆*° だけど現実問題なかなか理想通りにはいかないものだよねぇ…….。
だからみんな必死になって恋愛をするのかしらね? あー私にも運命的な出会いが来ないかしら? ***
「ちょっと祐子聞いてる?」
「えっ?あっごめん考え事してたわ!」
「もうしっかりしてよ!!」
そう言いながら目の前に座っている友達の美香が呆れた顔をしている。
今は昼休みで教室にいるクラスメイト達はそれぞれのグループに分かれて昼食を食べている。
私はいつものように親友である美香とお弁当を食べていたのだけれど、私が上の空になっていたせいで話し掛けられていたことに気が付かなかったらしい。
「本当にゴメンネェ~それで何の話だっけ?」
私は慌てて謝るともう一度話を聞いてみた。
「だから今度の日曜日皆で合コンするんだけど祐子は来るのかって聞いたのよ」
「あーごめん。私彼氏出来たからパスね」
そう言って私は友人達を置いて教室を出た。
大学に入ってから三回目の春を迎えるけど相変わらず恋愛には興味を持てなかった。高校まではそこそこモテた私だけど大学では一度も男の人と付き合ったことは無い。周りの友達達は次々恋人を作って行く中、私はずっと独り身だった。
別に恋に憧れが無い訳じゃない。むしろしたいと思っている。ただそれが出来ない理由があるのだ。それは―――。
***
「おはようございます」
「おぅ祐子ちゃん!今日も可愛いねぇ!」
ここは『愛の伝道師』と呼ばれる人物が経営している占い館だ。私の名前は佐々木優香里。この愛染館の占い師の一人でもある。
「ありがとうございます。ところで何か悩み事でもありましたら聞きますよ?」
私が笑顔で言うと彼はニヤリと笑った。
「へぇ……じゃあお言葉に甘えて聞こうかなぁ」
彼の表情を見て私は思わず苦笑いをした。こういう顔をした客は必ずと言って良い程変なことを聞いてくるからだ。
「実は俺さ、運命の人を探しているんだよ」
ほらやっぱりそうだと思った。
お前たちは所詮この程度だ。
だからさぁ、もうあきらめろよ。
期待外れだったな、俺もお前たちも。
どんな時だって、結局は何も変わらないんだよ。
どうせ誰も救えないし、何も変えられない。
そんなことわかっていたはずなのに。
そうやってまた諦めて逃げるのか? それはそれで別に構わないけど。
あーあ。
ホント、つまんねぇな……。
――