テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「放っておいて。……昨日はありがとうございました。でも、もう干渉しないでください」
突き放すような言葉を投げ、部屋に入ろうとする。
だが、緊張と疲労で指が震え、鍵がなかなか穴に入らない。
情けなくて、視界がじんわりと熱くなる。
「……強がらんでええのに」
光の低い声が、すぐ近くで聞こえた。
「自分、会社ではバリバリやってるんやろ? でも、ここではただの『貯金なさそうなお姉さん』やん。誰も見てへんよ、そんな格好いい自分なんて」
「……あなたに何がわかるの」
振り返り、睨みつける。
でも、光の瞳には嘲笑の色なんて微塵もなかった。
そこにあるのは、舞台の出番を待つ芸人のような、どこか鋭く、それでいて穏やかな静寂だった。
「わからんよ。でも、俺も売れへん芸人やってて、毎日『面白い自分』のフリして生きてるからさ。似たようなもんやろ?」
その言葉が、私の心の堤防を、ほんの少しだけ崩した。