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この街では、強さは名前より先に語られる。
地下にある違法闘技場「ゼロランブ」。
ここでは本名も過去も必要ない。ただ勝てばいい。
少年は今日もリングに立っていた。
「次、ノーネーム参戦者。コードネーム“ゼロ”」
観客がざわめく。
ゼロ――無名で、無所属、流派不明。
それなのに連勝記録は誰よりも長い。
対戦相手は、元王者・剛力のゴウ。
体格はゼロの倍。拳は岩のように硬い。
ゴングが鳴る。
ゴウが突進する。
一撃で終わらせる気だ。
だが、ゼロは避けない。
――ドンッ
真正面から拳を合わせた。
「なっ……!?」
ゴウの拳が、わずかに弾かれる。
ゼロの拳は震えているが、折れていない。
「型がない……だが、無駄もない」
ゴウは笑う。
次の瞬間、連打。
ゼロは後退しながら、すべてを受け流す。
拳、肘、膝、蹴り。
すべてが“ギリギリ当たらない”。
観客が気づき始める。
「……あいつ、見えてるぞ」
「全部、読んでやがる」
ゴウが叫ぶ。
「お前、何者だ!」
ゼロは初めて口を開いた。
「……俺は、殴られる理由を探してるだけだ」
その瞬間。
ゼロの動きが変わる。
今まで防御だけだった体が、前に出る。
一歩。
二歩。
三歩目で――
渾身の一撃。
拳が、ゴウの顎を打ち抜いた。
ゴウは崩れ落ちる。
リングが静まり返る。
勝者、ゼロ。
だが、ゼロは拳を見つめるだけだった。
「……まだ、足りない」
その夜。
闘技場の奥で、ある男がつぶやく。
「ついに現れたか……
“あの流派”の生き残りが」