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第33話 ラキの過去
前回までのあらすじ
祐の過去を見た。以上。
※ここから下はいつも通りラキの視点だよ。
これは僕が小学6年の時だ。
その日は何気ない、いつもの土曜日だった。
僕は6年生の時、テニスをしていて、それが終わり、祐と図書館で勉強しようと話になった。
家に帰り、母さんに行ってきますと言い、僕は家を出た。
夏休みの1週間前だから外は暑く、陽炎が立ち揺らめいていた。自転車に跨ぎ、僕は鼻歌交じりに図書館に向かった。
交差点に差し掛かり、左右確認をした後、僕は漕ぎ出した。そしたら、右から車がやってきた。
黒い車で、運転手は若者だったらしい。急いでいて前が見えていなかった。と言っている。
はね飛ばされて、宙を舞う。その時ヘルメットはしていたが、落ちたところがコンクリートの上で、僕は気を失った。
ヘルメットをしていたが、完全には防ぎきれずに、僕は死んでしまった。
……。
「おい、起きろ。起きろって」
ユサユサ
「あと5分…」
「起きないと、お前のことを殺すぞ?」
「はい!起きます!って…ここどこ?」
「ここはお前の住んでいた時間軸とは別の時間軸だ」
なんだコイツ…新手の厨二病か?
「お前に適した『固有力』は『時を無くす』だ。ここでは使うなよ。私がめんどくさいから」
「そうなんだね。えっと…君の名前は?」
「私の名前はアヤメだ。花にアヤメと言うのがある。私の一番好きな花だ」
花?花を自分の名前にしてるんか?想像以上に痛々しいやつだな…。
「アヤメの花言葉には『希望』と言うのがある。私に元気を与えてくれる」
「そうなんだね。それじゃあ、その『固有力』とやらの使い方位教えてくれない?」
「使い方は簡単だ。時を無くすイメージをすればいいんだ」
イメージって言っても…そんなん分からないよ。
「分からないなら、使わなくていい。それに、無くした時を戻すには、『時を創る』と『時を刻む』のどっちかの協力が必要だからな」
「あぁ。ありがとうそれじゃあ、帰る方法教えてくれない?」
「この世界の1部だけ無くすイメージをしろ」
ぐぬぬぬぬ…
ボンッ!
「穴が空いたな。そこに入れば元の世界に戻れるぞ」
「そっか。ありがとう!」
「おう。…。こいつがみっちゃんの運命の相手か…」
そして、僕は現実世界に戻ってきた。
「……ここは?」
「ここは病院だよ。1週間寝てたからびっくりしたよ」
1週間…?夏休み始まってるじゃないか!?
「は、早く退院しないと!小学生最後の夏休みを謳歌しなくては!」
「ま、待って!今動くと…」
「ってあれ?動けないじゃん」
「ずっと寝てて筋肉が衰えたのかな?大丈夫だよ。私たちが治すから」
看護師さんにそう言われ、僕は頑張って身体を治した。
にちのうcv.ラキ(過去)
それから1ヶ月…。何とか夏休み中に退院出来た。残り3日だけど…。
「ただいま」
そして、僕は1人でアパートにある家に帰った。全く…迎えに来てくれてもいいじゃあないか。
「………」
誰も「おかえり」と言ってくれない。どういう事だ?
「おーい。あなた達の子供が帰りました…よ…」
僕は目の前に入ってきた光景に息を飲んだ。
あたりは暗く、赤く、床には水溜まりができていた。床で父さんと母さんが寝ている。風邪をひくぞ。
至る所に蜘蛛の巣が貼ってあり、冷蔵庫の中身も消費期限切れのものばかりだ。
そして、僕は言葉にならない音をひたすらに上げた。
その音を聞いた近隣住民達が僕の部屋に入ってきて、警察に通報してくれた。
警察は僕を引き取り、部屋を調べ、取り調べをしていた。
だが、犯人は見つからなかった。
ナイフで刺されたような跡があると言っていたが…そこから犯人を見つけるのは困難だと言っていた。
その部屋は使えなくなると思ったが…僕が頼み込んでその部屋を使わせてもらった。部屋をくまなく洗い、匂いを取り、消毒をし、母と父が残していった遺産を使って、清掃をした。
大家さんも承諾をしてくれたので、業者に頼んでやった。
嫌だった匂いも、今は記憶にあるだけだ。消毒の匂いが漂うこの家で、僕は一人暮らしをすることを決意した。
祐には事情を…説明していない。祐には「母さんと父さんが夫婦喧嘩したから今だけ一人暮らしをしている」と言っている。祐も納得しているらしい。
これが。僕の過去。