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「半分かよ」
「へへへ、牡蠣も美味しかったですよ」
「朱里は美味いもんを与えていれば、基本的にご機嫌だからいい女だよな」
「お? いい女の条件はそんな感じですか? だったら私、ミス・インターナショナルで優勝できそう」
「野望がなかなかデカいな」
「信長なので……」
「ゲームかよ」
私たちはいつものようにポンポン言い合い、クスクス笑う。
「……尊さん」
「ん?」
「ぎゅーしていいですか?」
「来いよ」
尊さんは微笑み、トントンと自分のベッドを叩く。
「では……、あっ、ちょっと待って! 汗掻いてますから、メイク落としてシャワー浴びてから!」
「……一旦冷静になっちまうが、確かに言う通りだな。俺も汗掻いてるわ」
「じゃあ、動けなくなる前に行ってきます!」
私はムクッと起きると、テキパキとシャワーに入る準備をし始めた。
「一緒に入るか?」
そう尋ねられたけれど、私はちょっと考えてから「んーん」と首を横に振る。
「ゴージャス風呂、独占してきます」
「分かった」
浴槽にお湯を貯めている間、丁寧にメイクを落とした。
すっぴんになった私は全裸になり、洗面所の鏡に映った自分を見る。
(疲れた顔、してるなぁ……)
美味しい物を食べたあとは、いつも恵に『顔がツヤツヤしてる』と言われていたけど、今日はなんとなく冴えない顔をしている。
「……お風呂入ろ」
溜め息混じりに言った私は、なるべく何も考えないようにして髪と体を洗い、浴槽に浸かった。
浴槽の中で膝を抱えていると、今日の出来事が脳裏に蘇ってくる。
もう、何の遺恨もなく夏目さん夫婦とお付き合いしていけると確信している。
凜さんの事は尊敬しているし、とても素敵な人だ。
でも彼女は尊さんの人生に深い爪痕を遺した女性だ。
尊さんは凜さんを傷つけたと思い、長年悩み続けてきた。
今回の旅行でそれが解消し、すぐにすべて〝なかった事〟にはならないけど、お互い想いを伝えて再出発できるようになった。
――けど、思ってしまう。
尊さんが、凜さんに出会っていなかったら。……と。
(駄目だ。心が狭い。あんな素敵な人なのに)
私は溜め息をつき、両手で顔を覆う。
(……尊さんに甘えたいな。……抱いてほしい)
そう思うものの、こんな気持ちで抱いてほしいなんて思うのは駄目だ。
愛されている自信が揺らいでいるから、慰めるためにエッチしてほしいなんて、自分の都合のいいように尊さんを使っているに過ぎない。
私は目を閉じ、隣室にいる尊さんを想う。
彼は今、何を考えているんだろう。
お風呂から上がると、尊さんがバスルームに向かった。
私はパジャマ姿でベッドルームにあるテレビをなんとなく見る。
天気予報では普段見ない地域が紹介され、それだけでも興味深い。
ボーッとテレビを見ていたけれど、私は溜め息をついてベッドの上に横になり、恵にメッセージを打ち始めた。
【明日、東京に帰る。お土産買って帰るね】
すると少ししてから既読がつき、返事がくる。
【お疲れ様。宮本さん? どんな人だった?】
【いい人だった。元カノマウントとかまったくとらないし、本当にいい人。尊さんとの話し合いも険悪にならなかったし、彼女の旦那さんも凄くいい人だった。来られて良かったと思ってるよ】
【その割にテンション低いじゃん。元カノを前にして色々考えちゃうの分かるけど、今は朱里だけなんだから、自信持ちなよ? 食いしん坊で燃費が悪いあんたを無条件に『可愛い』って言ってくれるのは、篠宮さんしかいないんだから】
「ふふ、燃費が悪いって」
私は思わず呟き、笑う。
コメント
1件
やはり持つべきものは友だね…🍀✨️ 朱里ちゃんを思いやる恵ちゃんの心遣いが嬉しいね🥹