From.司
俺は重い足取りで、近くのホームセンターへ向かった。
類が心配だ……。
類は今、親元を離れて1人で暮らしているらしい。だから狙われるんじゃないか…?
昨日、類と相談して俺は類の家に住むことになった。
今、護身用に何か武器になるものを探しているところだ。ストーカーに会った時、対抗するために。
こうして武器を取り、カゴに入れると何だかヤンキーにでもなった気分だな…。だが、類を守るためだ。
こんな事してる間に、類は襲われたりしてないだろうか…?
俺は急いで会計を済まし、類の家へと急いだ。
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From.類
司くんと同棲する事になっちゃった…!
司くんは僕のことをすごく大事に思ってくれてるんだなぁ…。
今日だって、護身用の武器を買ってくるってホームセンターへ向かったし…。
「ただいま。」
司くんが帰ってきた!!
「おかえりっ!司くん!」
「とりあえず、食料とかも買ってきた。1週間はこれで過ごせるだろう。」
「わぁ、ありがとう!」
「類は危ないから、極力家から出ないでくれ。それから、どこかへ出かける時は俺に伝えること。いいな?」
司くんは心配症だなぁ…それだけ、僕が大切なんだよね!
「うん、分かったよ。」
司くんはどこか上の空だった。ストーカーが来ると、気が気でないのだろうか。そういえば、最近はストーカー被害なかったな…
「そうだ、さっき彰人から連絡が来たんだ。」
「東雲くんから?」
僕は、他の男の名前が出て少しムッとした。
「ああ。なんか相談事があるから、いつものカフェに来てくれってさ。」
いつものカフェ?そんな頻繁に2人は会ってたの?
「へぇ…相談事って何だろうね。行くのかい?」
「ああ。アイツには世話になったしな。今度は俺がアイツの力になろうと思ってな。」
ふぅん…そうなんだ。司くんは優しいからね。放っておけないんだよね。じゃあ仕方ないよね。
「そうかい。なら、僕はここで待ってるから行っておいでよ。」
「ああ!夜までには帰るからな!」
「それから、俺が帰るまで絶対に家から出るなよ!あと、鍵も開けちゃ駄目だ!」
「ふふ、分かってるよ。ありがとう。行ってらっしゃい。」
「すぐ帰るからな!行ってきます!」
……司くんったら、僕を1人にするんだね。
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From.司
「彼女と別れた?!」
俺は思わず大きな声をあげてしまった。
「ちょっ、声デカいですって!!」
彰人は慌てて、俺を制した。
「それに…フラれただって?向こうから告白してきたんだろう?」
「いや…それがなんか、分かんなくて。」
「フラれた理由は?」
「なんか…彰人が悪いわけじゃないの、私が悪いの。好きになってごめんなさい…って言われました。」
「なんだそりゃ?好きになってごめんなさい…?」
彰人は本当に意味が分からないようだ。俺だって、よく分からない。
「他には何か言ってなかったのか?」
俺は彰人に尋ねる。
「いーや。なんにも。ただ、すっげぇ震えてましたね。なんか…怯えてるっつーか…」
「怯えている?…お前、まさかとは思うがDVとかしてないだろうな。」
「は?!するわけねーだろ!つか、アイツとは手繋ぐくらいまでしかしてねーっつの。」
そうだろうな。彰人はそういう事する奴じゃない。彰人は相当参っているようだった。
無理もないだろう。訳の分からない理由で、彼女にフラれたんだから。この様子からして、彰人は本当に彼女が好きだったんだろう。
「はぁ……でも、話したらちょっと楽になりました。」
「そうか、それは良かった。復縁は無理そうか?」
彰人は諦めたように頷いた。
「LINEもメールもごめんなさいしか返ってこないし…会っても逃げられるんですよ。」
「俺、なんかしちゃったのかなー…。」
俺は今日、冬弥に電話しようと思った。
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From.彰人
司先輩と別れた後、俺はいつものCDショップへ向かった。
こういう時は、音楽に限る。気晴らしに歌うのもいいな。
「彰人?」
後ろから声をかけられた。
「おう、冬弥じゃねーか。」
「浮かない顔をしていたが…何かあったのか?」
「俺、そんな顔してたか…?」
さすが相棒と言ったところか。何でもお見通しみたいだ。
「実はさ、彼女にフラれちゃったんだよな。」
「フラれた…?なぜ?」
「それが分かんねーんだよな。ずっとごめんなさいばっかでよー。」
冬弥は黙って俺の話を聞いてくれた。
冬弥は優しい。いつも、我儘な俺の言うことを聞いてくれる。
「失恋とかさ、引きずってても仕方ねぇって分かってるんだよ。だけどなー、簡単には切り替えらんねぇわ。」
「…すぐにでも、切り替える必要ないんじゃないか?」
「ゆっくり、彰人のペースで良いと思う。それに、すぐに切り替えられないのは彰人がそれだけ彼女を好きだった証拠だ。」
確かにそうだ。そう言われてみれば、そんな気がする。
「気晴らしと言ってはなんだが、歌ならいくらでも付き合うぞ。とはいえ、俺にできるのはそれくらいだが…」
冬弥は少し照れながら言った。
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらってもいいか?」
「ああ。俺は今から時間がある。何時間でも付き合おう。」
「ありがとよ。んじゃ、いつもの場所で歌うか。」
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From.司
帰ったら冬弥に電話しよう。
俺はそう思い、類の家へと急いだ。少し遅くなってしまった。何もないといいが…
「ただいま!!」
俺がそう言うと、類は泣きながら俺に抱きついてきた。
「つ、司くん…!!ま、また手紙が入ってたんだよ…!!」
「何?!?!」
「その手紙は?!見せてみろ!!」
俺は類から手紙を受け取り、中身を見る。
『毎日見ているよ。そうだ、この間シャンプー変えたよね?いつもと違う、良い匂いだ。それよりも、男と同棲したんだね。大丈夫?その男に監禁されたりしてない?もし君が言うなら、すぐにでも助けに行くよ。』
…気持ち悪い。吐き気がする文章だ。
類はまだ泣きじゃくっていた。怖かっただろう。俺がコイツを1人にしたから…
「ポストの方で音がして…見たら手紙が入ってたの。それから…怖くて…」
「犯人は見たか?!」
類は首を振った。
「それが見えなかったんだよ。ドアを開けるのも怖いから、ドアスコープでしか見なかったんだけど…」
「そうか…。すまない!!俺がお前を1人にしたばっかりに…!!」
「司くんのせいじゃないよ。悪いのはストーカー。君が気に病む必要はないよ。」
なんて優しいんだろう。自分が1番怖くて不安なはずなのに。
「…決めた。もう、俺は類の傍から離れない。ずっとお前といる。」
そうすれば、ストーカーも手出し出来ないだろう。もう、類を不安にはさせない。俺がコイツを幸せにするんだ。その為に、外なんて必要ない。
俺と類。世界はこの2人だけで充分だ。
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コメント
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こういう狂った愛情を描いてるお話好き…あと類くんのリアクション毎回可愛い。 襲いt((((((((((殴 お巡りさん私です( ´ཫ`)ノ
愛とは恐ろしいね…(なんかこいつ悟り開いてるけど気にしないでください)