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白山小梅
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PM10:00
宣言通りのバイト帰り。芽依が連れてきたのは、大学生のあたしたちは中々来ない街の一角にあるBARだった。
夜の街に溶け込む外観と、ネイビーの看板は目を凝らさないと分からないし、階段を昇るとやっと入口がライトアップされていて、外界を遮断する境界線が引かれているみたいで、踏み入るのをすこし躊躇う。
「て、え?BAR?芽依、BARに通う趣味あったっけ?」
「そ!ちょっと前に長谷川くんと一緒に来たんだけどね?店員の顔面偏差値バグってて、正直長谷川くんどころじゃなかったのよ〜」
芽依は二人でBARに行くほど長谷川くんと親しかったんだ……。
友人の交友関係の進行を初めて知ったあたしは、芽依のあとを追うようにBARの扉を潜る。
雰囲気もあるし、平日の夜だっていうのに人の入りも多くて、ひと目で人気店だと伺える店内。案内してくれるバーテンダーに芽依は「こんばんわあ」と猫みたいな声を出した。
「こんばんわ、芽依ちゃん。こちらにどうぞ」
案内されるカウンター席。両隣りを人数ひとつ分開けた場所に繋がされ、遅れてあたしも隣に座る。と、芽依が声を掛けた店員さんが色白でおそろしく綺麗な人だと気付いた。
わー……この人のカッコ良さ、ちょっとえぐいな。
腕の途中で捲られた黒いワイシャツは、色の白さを際立たせているし、ヘーゼルカラーの髪色は可愛らしさを後押ししている。それに特に印象的なのは目元。羨ましいくらいの平行二重は、緑がかった茶色の瞳がきらりと潤っていた。
現実的ではないうつくしさに目を奪われていると、元々上がっている彼の口角が丁寧に上を向いた。
「あ。前に来てくれた子だ。えーっと、芽依ちゃん。今日はお友達と?」
「え!覚えててくれたの!」
「うん。ハセちゃんがすごい可愛い子連れてるって思ったから覚えてる。ハセちゃんとはその後どお?」
「一回えっちしたあと、個人的には連絡してなーい」
「ワー、清々しい」
「チカくんは?年上のお姉さんとその後どお?」
「全然相手にされなくてぴえん絵文字ばっか送ってる。ぴえんぴえん」
「可愛い〜〜。なぐさめたい〜〜〜!!」
「あはは、でも僕それなりにおっぱいないとたたないなー」
「ひどい!ペちゃでも許してよ!」
「ごめんね?ハセちゃんのお友達ってことでポップコーンサービスするから許してください。あ、芽依ちゃんのお友達ちゃんは、なにか頼まれますか?」
……この人、ちょっと危険な気がする。
二人の会話の中に散りばめられた危険な香りを拾いつつ、「えっと……じゃあ、カシスソーダで……」なんて、オシャレなものではなく馴染み深いカクテルを告げた。だって、BARは未踏の地だもの。
「おっけー。僕も飲んでいい?」
「うん、飲もう飲もう〜!」
その人は芽依と軽い会話をする傍ら、手際よく氷を掬っては鮮やかな手つきでリキュールを手に取る。目分量にしては正確にグラスに流し込み、プシュッと音を立てて炭酸水を注いだ。
あたしもバイト中お酒を作るけれど、それとはまるで違う。魔法みたいな動作に思わず見蕩れててしまう。