テラーノベル
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どすどすと、廊下を歩いていく。決して振り返らずに、誰にも追いつかれないように。
頭の中には、先ほどの出来事が何度もリピート再生されている。
日本「……中国さんって、まつ毛長くて綺麗ですね。羨ましいです」
中国「あぁあもう……‼︎」
声にならない声でうめく。こんな顔を、姿を見られたら、どんなふうに言われるかわかったもんじゃない。
中国は手で必死に顔を隠す。
中国「日本……ふざけんなアル……!」
ぶつぶつと何かつぶやきつつ、やっと辿り着いたトイレに駆け込んだ。
しかし、そこで中国は、ヒュッと息を詰まらせる。
?「……あ?」
随分とガタイがよく背の高い国が、虚ろな目で中国のことを見下ろしていた。
中国は驚いたのを悟られないよう平然として見せる。
中国「……ロシアアルか。なぜトイレにいるアル。我が1番最初に教室から出たはずアルよ」
ロシア「……」
ロシアは答えず、手に持っている瓶をゆらゆらと揺らす。ちゃぷ、と音がした。酒臭い。
中国(こんな時まで飲んでるアルか……)
少々呆れつつ、中国は、ロシアのことを見つめ返す。
だが、中国は気づいた。自分が、顔が真っ赤な状態でトイレに駆け込んだということに。
中国(まさか、見られてたアル⁉︎)
中国「や、ちが––––」
ロシア「興味ねぇ」
ロシアは吐き捨て、凍りつくような冷えた目線で中国を横目に流すと、そのままトイレから出て行った。
足音が遠ざかっていく。
ぽつんと残された中国は、恥ずかしさと苛立ちで唇を噛み締め、しばらく立ち尽くしたままだった。
ロシア「……」
ロシアは教室に戻らず、広い校舎をぶらぶら、酒瓶を手に歩いていた。
すると、タッタッタッと、小走りのような足音が近づいてくる。
?「ロシアさん!」
ロシア「……んだよ」
ギロッとロシアは、声がした後ろを睨んだ。
声をかけてきたのは国際連合。世界をまとめる存在……まぁここでは校長、である。
国連「教室にいなかったと思えばこんなところに……! 探しましたよ⁉︎」
ロシア「俺は馴れ合いなんてするつもりはない」
ばっさりと言い切り、再び前を向いて歩き出してしまうロシア。
国連「ですが……‼︎」
ロシア「だったらなんだ?」
ピタリとロシアが足を止めた。
国連は慌てて速度を緩める。歩幅の広いロシアについていくために、かなり早歩きをしていたらしい。
振り返らずに、緊迫した空気の中、ロシアは口を開く。
ロシア「仲良くできないなら、離れていくなら……武力で制圧したって構わないのか?」
国連「……っ!」
国連(なんて圧……常任理事国なだけはありますね……!)
それに、と国連は顔を歪める。
––––教室には、ウクライナもいる。
ロシア「俺が離れてるんじゃない。そっちが俺を離してるだけだ。仲間ごっこをする道理はない」
それだけさっさと言って、ロシアは再び歩き出した。
国連はしばらく呆然と立っていたが、はっと我に返り、ロシアの通った曲がり角を急いで曲がる。
しかし、すでにロシアはいなくなった後だった。
ロシア「あぁあうぜぇ……」
眉間に皺を寄せながら、ロシアはうめく。
どいつもこいつも、俺を否定する奴らばかり。舌打ちしながら、足早に廊下を歩いていく。
––––ずっと求めているものがある。
離れていかない、裏切らない、とくべつ。俺しかいない、と頼ってくれるもの。
俺の思い通りになっていてもいいし、時に反抗してくれてもいい。ただ、俺を孤独から救ってくれる存在が欲しい。
愛して、慕って、笑って、受け止めて、心の穴を埋めて欲しい。
それで。
俺の思い通り壊させてくれる。
そんな存在がいないことを、俺は知っている。
コメント
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やっぱ、日本愛されが最強です〜!(っ'ヮ'c)ウゥッヒョオアアァ
ロシア……日本がいるじゃないか…!!