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もちぷよ
987
270
きゅー
2,024
「ほら、見てみ?」
カメラのシャッター音の直後、彼がスマートフォンの画面を覗かせてくる。
そこに写っていたのは、僕の予想を遥かに上回る、言い訳のしようもないほど真っ赤に染まった自分の顔だった。
僕は思わず両手で顔を覆い隠す。
「顔、見せて?」
「、っ……無理……」
「……まだ、俺のこと怖い?」
そうじゃない。
それだけは絶対にない。
僕は激しく首を横に振る。
今、顔を上げたら、この胸から溢れそうな”好き”の気持ちが確実にバレてしまう。
そして、僕自身の我慢も決壊してしまいそうだから。
……あれ?そもそも、我慢する必要なんてあるのかな?
ふと、そんな疑問が脳裏をよぎった。
なんで僕はこんなにも必死に気持ちを隠しているのだろう。
僕は彼が好きで、彼も僕が好き。
こんなにもシンプルで明確な答えが出ているのに、僕は一体何をそんなに怖がっているのだろう。
また傷つくのが怖くて、臆病な自分を守るために、「一人で強くならなきゃいけない」なんて、ただ自分の殻の中に逃げ込むための言い訳を並べていただけじゃないか。
強くなるって、一体何だろう。
僕はただ守られるだけじゃなくて、しゅんのことも守りたい、幸せにしたいと思った。
だから強くなりたかった。
そのために、まずは僕一人で生きていけるようにならなきゃいけないと思った。
でも、一人で生きようとするから、逆に弱くなってしまう。
しゅんがいるから、僕は強くなれる。
しゅんがそばにいてくれると思うだけで、僕の凍てついた世界には涙が出るほどの光が差し込んで……、いくらでも頑張れるんだ。
甘えだと言われればそうかもしれない。
でも、僕は甘えたい。
しゅんになら、僕のすべてを曝け出して溺れたい。
そしてしゅんにも僕にだけはカッコ悪いところも全部見せて、子供みたいに甘えてほしい。
僕は、そういう関係になりたいんだ。
……そう思った。
「……しゅん、あのさ、……俺、もう、強がるのやめる」
顔を覆っていた手をそっと下ろし、彼の少し冷えた指先を握りしめる。
そのまま真っ直ぐにしゅんの瞳を見つめた。
「ひとりで平気なフリするの、もうやめるから……。だから、……っ」
張り詰めた空気の中、緊張で喉の奥が苦しくなる。
「ねぇ、しゅん……好き」
「……、え?」
心臓の音がうるさすぎて、掠れた小さな声になってしまった。
何も反応のない彼の様子から、もしかしたらちゃんと届かなかったのかもしれない、不安になった。
けれど、もう一度その言葉を紡ぐだけの勇気は、今の僕のどこを探しても残っていなかった。
急激に押し寄せてきた羞恥と虚しさに、耐えきれなくなる。
僕はしゅんの手を離し、代わりに自分の拳をきつく握りしめて、逃げるように視線を床に落とした。
「ううん、……やっぱり、何でもない」
「へ?…いやや……」
いや?何が?
そう思った瞬間、世界が反転した。
激しい勢いで引き寄せられ、気づけば僕はしゅんの腕の中に隙間なく閉じ込められていた。
「っえ……?」
「ごめん、聞こえてた……。俺も好き。大好き。……なぁ、なかったことにせんで?」
僕の背中に回された腕に、ぎゅっと、痛いくらいの力がこもる。
その必死な強さに彼の剥き出しの想いが乗っているようで、僕はたまらなくなって、彼の背中にしがみつくように抱き返した。
壊れそうに激しく脈打つ心臓の音が、互いの身体を通して重なり合う。
耳元に触れる彼の体温が、泣きたくなるほど心地よかった。
「なぁ……お願いやから、もう一回言って?」
耳元で静かに震えるしゅんの声。
ただの「一度きりの奇跡」にしたくないという彼の願いに応えるように、僕は意を決して唇を動かした。
「……すき」
その瞬間、しゅんの身体が小さく震えた気がした。
彼はハッとしたように僕の身体を少しだけ引き離すと、それが夢じゃないと確かめるように、僕の肩を両手でぎゅっと愛おしそうに掴み直した。
視線が真っ直ぐに交わる。
「もっかい……目、見て言って?」
恥ずかしさで胸が破裂しそうだった。
でも堰を切ったように溢れ出した愛おしさが、もう僕に嘘をつくことを許さない。
言葉が、涙みたいに零れ落ちていく。
「しゅん、好き」
「……ありがとう。俺も好き。ほんま、ありがとう」
一度離れた身体を、今度はこれでもかというほど激しく抱きしめられた。
彼が愛おしくて、もう言葉にならない。
「なぁ、じゅう。好きやよ。俺が一生守るから。……俺は、じゅうがそばにいてくれるだけで、それだけで強くなれるんさ」
彼の目に浮かぶ涙の理由が、今の僕には痛いほどよく分かった。
強くなりたかった。
一人で生きていけるようにならなきゃって、頑なに心を閉ざそうとしていた。
でも、それは間違いだったんだ。
胸の奥から溢れ出す愛おしさが熱い涙になって僕の視界を優しく滲ませていく。
しゅんは自分の顔も涙でぐしゃぐしゃに濡らしているくせに、僕の目元を優しく指先でそっと拭ってくれた。
その不器用な愛しさに胸が痛くなる。
だから僕も彼の頬を伝う温かい涙を指先でそっと拭い返した。
「じゅう、愛してる」
その一言が、僕の心を完全に溶かした。
傷つく恐怖も、臆病な自分を護るための言い訳も、彼の圧倒的な熱量の前ではもう何の役にも立たない。
ただこの真っ直ぐなぬくもりを全身で受け止めたいと願うだけだった。
「しゅん、俺も……」
「……俺も、なに?」
少しだけ意地悪な、ずるい顔をして、しゅんが僕の顔を覗き込んでくる。
いつもの僕ならここで真っ赤になってはぐらかしていただろう。
でも、もう何も迷わない。
この確かな想いを彼に全部届けたかった。
「俺もしゅんのそばにいたい。しゅんが好きだから。愛してるから……だめ?」
「……え、?」
しゅんはきっと、僕がいつものように照れて逃げると思っていたのだろう。
予想を遥かに超えた僕の言葉に、彼は目を真ん丸にして完全にフリーズした。
「え……嘘やん、夢なんかな……?」
そう言って狼狽えるしゅんの大きな瞳から、堰を切ったようにまた大粒の涙がポロポロと溢れ出す。
その愛しさが限界を超えて、僕は彼の濡れた頬を両手で優しく包み込んだ。
「しゅん……俺と、付き合って?」
「…じゅうっ… 俺で、いいん?」
「しゅんじゃなきゃ、無理」
「うぅ……っ、じゅう……! ありがとう……一生かけて幸せにする。絶対やから……っ」
しゅんは僕の首元に思いきり顔を埋め、まるで子供のように声を上げて泣いた。
そこから伝わる彼の熱い涙の温度と激しい身体の震え。
その不器用な愛しさが眩しくて、僕の目からも静かに幸せな涙が溢れていく。
想いが通じ合うって、こんなにも心が震えて、温かくて、苦しいほどに幸せなことだなんて知らなかった。
僕はただ、腕の中のこの愛おしいぬくもりを壊さないように、強く、強く抱きしめ返すのだった。
to be continued…
コメント
4件

はる様 丁寧な感情描写で、ぐっと引き込まれて更新を、楽しみにしておりました。2人がやっと本当に通じ合えてよかった〜✨️と、思わずコメントしてしまいました。はるさんの書く二人は、本当に可愛らしくていじらしくて、見ていてきゅんきゅんします。大好きな気持ちが文面からあふれてて素敵だなぁと思ってます。 毎日更新してくださっているのも感激です。 無理のない範囲で、今後も更新を楽しみにしております。

コメント失礼いたします! ついに告白した🤍さん可愛いです!泣いちゃう❤️さんも可愛いし格好良くて…。これからどんな展開になるのか、めちゃくちゃワクワクしながら読ませていただいております。 いつも更新していただきありがとう御座います!